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 夕刊連載小説は1月6日から、津村記久子さんの「ディス・イズ・ザ・デイ」が始まる。プロサッカー2部リーグの架空のチームを応援する人々を描く物語だ。津村さんに抱負を聞いた。

 昨年の秋、ふとしたきっかけでスタジアムに足を運び、サッカーJ2(Jリーグ2部)に興味を持ったという。大阪府在住の津村さんは「本当は東京のパンクロックのフェスティバルに行きたかった。でもその月何度も上京しててお金がなかったから、こっちにしとこうかなと」。

 その日はリーグ最終節。試合後、選手たちが観客席の前にあいさつに来ると、20歳くらいの女性2人が、選手一人ひとりの名前はおろか、コーチや通訳の名まで叫んで懸命に手を振る姿に驚いた。

 「感動したし、面白いと思いました。スタジアムでは、きらきらした女の子も酔っぱらってるおっちゃんも同じ場所にいる。いろんな人がいて、いろんな悲喜こもごもがある」

 物語はリーグ最終節の全11試合を迎える人々を描く連作短編の形式。架空の22チームを応援する登場人物22人が、それぞれにシーズン最後の試合に臨む。

 だからタイトルは「ディス・イズ・ザ・デイ」(THIS IS THE DAY)。「今日がその日だ」というような意味だ。最終節の「その日」、さまざまな思いを託してチームを応援してきた人たちの何かが、少しだけ変わる。

 「勝つか負けるかだけじゃない。最終節までの1シーズンをあるチームと過ごすことで、人生がちょっと違う方向に変わる物語を書きたい」

 津村さんは今年、関東から九州まで30試合をスタジアムで観戦した。「J2の良さは多様性と個性。チームを応援する人たちの、華々しくなくてもこのチームが好きだというひたむきさに打たれる」

 10月に短編集『浮遊霊ブラジル』(文芸春秋)を出したばかり。川端康成文学賞を受けた「給水塔と亀」など、従来の津村作品とはひと味ちがう作品が並ぶ。「短編は一度きりだからこそ、新しいことに挑戦できる」と津村さん。

 連作短編の形をとる今回も「これまで書いたことがなかった新しい人間関係をたくさん書きたい。スタジアムでいろんな人たちの面白い話を聞かせてもらってきたから」。

 短い物語をいくつも重ねる今作は、うっかり何度か読みそびれても、小説の世界に戻ってきやすい作品になりそうだ。「第4話は読むの忘れたけど第5話からまた読もう、という感じでいい。脱落してもまた戻ってこれる小説です」

 挿絵を担当するのは、サッカー関連のイラストで知られる内巻敦子さん。「サッカーに詳しくない人にも物語をイメージしやすい絵にしたい」と話している。(柏崎歓)

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 「ディス・イズ・ザ・デイ」は週1回、原則金曜日に大型紙面でお届けします。

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