[PR]

 かつて日本軍将兵たちの性の相手を強いられた元慰安婦らの気持ちをどうやって癒やすか。日韓両政府がこの問題で政治的に合意して1年が過ぎた。

 合意に盛り込まれた元慰安婦を支援する韓国の財団が今夏に立ち上がり、日本政府が送った10億円をもとに現金を支給する事業が始まっている。

 1年前に46人が生存していた元慰安婦のうち、これまで7割以上にあたる34人が受け取りの意思を明らかにしたという。

 傷つけられた名誉や尊厳が、70年後に受け取った金銭によって完全に癒やされることはあるまい。だが、いまできる限りを尽くそうとする意思が、元慰安婦らに少しでも受け入れられたのなら、政治合意には意味があったと言えるだろう。

 着実に歩みを進めてきた事業を、日韓両政府は今後も協力して後押ししてほしい。

 合意では、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決」することが確認された。

 持ちつ持たれつの両国関係はいまや、多くの分野に広がっている。慰安婦問題では互いに一定の譲歩をしつつ、一層連携を強めていこうとの思いが、合意には込められた。

 後戻りさせないためには不断の努力が欠かせない。なのに、合意の精神に逆行するような言動が双方で出るのは残念だ。

 朴槿恵(パククネ)大統領の進退問題に揺れる韓国では、野党勢力が日本との再交渉などを求めている。

 次期大統領選を意識し、合意を決断した朴政権を批判するための発言との指摘があるが、歴史問題を政争の具として使おうというのであれば、無責任な政治と言わざるをえない。

 日韓両政府が今後取り組むべきは、元慰安婦らに寄り添いつつ、不幸な歴史を教訓として、永遠の不戦の誓いなど普遍的な問題に昇華させ、人権の向上に努めることではないのか。

 日本政府や自民党の一部には財団に資金を出した時点で日本側は役割を終えた、との意見があるが、これも大きな誤りだ。

 お金の受け取りを拒む元慰安婦らは、安倍首相をはじめ、日本政府が真に謝罪していないとして反発を強めている。

 ソウルの日本大使館前に立つ少女像の移転は、韓国政局の不安定化でさらに難しくなったとみられている。釜山でも、市民団体らが日本総領事館前に少女像を設置しようとして混乱している。

 この問題が象徴するように、日韓の心が通い合わないと根本的な解決は図れないことを、双方が改めて認識すべきである。

こんなニュースも