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 「米国または日本政府による被害防止対策に特段の変化は見られず、違法な被害が漫然と放置されている」――。裁判所のこの重い指摘を、政府は真摯(しんし)に受けとめる必要がある。

 極東最大の米空軍基地、嘉手納基地の周辺住民約2万2千人が騒音被害を訴えた裁判で、那覇地裁沖縄支部は約302億円という、過去最高の賠償額の支払いを国に命じた。

 これだけの金額になったのは、原告数が最多だったのに加え、生活・健康被害の深刻さ、そして半世紀近くも激しい騒音にさらされている住民たちの苦しみを認めたからだ。

 判決は、音に対する感受性が高い子どもたちへの影響や、騒音が戦争経験者に戦時の記憶をよみがえらせ、大きな不安を与えることにも言及した。

 中でも注目すべきは、この間の政府の無策ぶりを、厳しい言葉で批判したことだ。

 日米両国は96年に、夜10時から翌朝6時までの飛行制限で合意しており、政府は対策に取り組んでいる証拠にあげた。

 だが判決は、測定点によってはその時間帯に月100回超の騒音が観測されていると指摘。「規制措置の少なからぬ部分が十分に履行されていない」「政府が米国に対し、履行を求める措置をとった証拠はない」と述べ、国側の主張を退けた。

 政府は日米合同委員会などの場で、米側に対し、規制の順守を強く働きかけるべきだ。国民の生命・身体を守るのが政府の最大の使命ではないか。

 一方で判決は、原告が最も強く求めてきた米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めについては、「国に米軍機の運用を制限する権限はない」とする最高裁判例を踏襲して退けた。

 安保条約と日米地位協定で、基地の管理運営の権限はすべて米国に委ねられており、司法手続きで救済する道は事実上ふさがれている。対応できるのは、やはり政府しかない。

 「漫然放置」は許されない。日米協議の俎上(そじょう)にのせるべく、交渉を進めるべきだ。

 政府は「沖縄の負担軽減」を繰り返す。だが普天間飛行場の辺野古への移設計画を強行し、騒音被害には手をこまぬいたままでは、県民の理解は到底得られない。安全保障の不安定化が進む要因ともなりかねない。

 判決にはこんな一文もある。「日米同盟で国民全体が利益を受ける一方、一部少数者に特別な犠牲が強いられている」

 沖縄で、そして本土で、基地被害に苦しむ多くの人がいることを、忘れてはならない。

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