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 大阪市を東京23区のような特別区に分割する案を練る「法定協議会」の設置案が、大阪府・市議会に出された。15年5月に大阪市の住民投票で否決された「大阪都構想」の再始動だ。

 地域政党・大阪維新の会を率いる松井一郎府知事と吉村洋文市長は都構想への再挑戦を公約に掲げ、15年11月の知事・市長ダブル選で圧勝した。法定協設置はその民意にこたえるものというのが両氏の考えだ。

 ただ、2年前の住民投票は、市内210万人の有権者の3分の2が投票し、反対と賛成の差は1万票余りという僅差(きんさ)だった。市を二分する争いの中、市民が悩み抜いて出した「都構想ノー」の結論はきわめて重い。

 これを覆すというのであれば、より明確な民意が不可欠だ。松井、吉村両氏は来秋にも2度目の住民投票をめざす方針だが、橋下徹前市長の時のような、都構想実現ありきの強引な進め方は願い下げだ。

 そもそも法定協設置には、府・市議会の議決が要る。維新だけでは過半数に届かない。

 カギを握る公明党は、大阪市を残したまま、区の数を絞って区長の権限を強める「総合区」の導入を主張する。松井、吉村両氏は、都構想が住民投票で再否決された場合は総合区にするとして、公明に法定協設置議案への賛同を働きかけている。

 だが、大阪市を廃止する都構想はもちろん、今の市内24区を8区に減らすとする総合区案も、行政制度に深く切り込む「手術」だ。移行に要するコストや、住民の利便性低下といった副作用も避けがたい。

 松井、吉村両氏は、都構想と総合区のほかに、大阪に選択肢はないと強調しているが、本当にそうか。市民の間では、現行制度を保ったままで改善は図れないのか、と疑問視する声も根強い。切り捨てることなく、耳を傾けていくべきだ。

 大阪は経済の低迷に苦しみ、急速な少子高齢化で3大都市圏では最も早く人口減少に直面する。貧困層の増大も深刻だ。

 維新は、統合型リゾート(IR)や万博の誘致、交通網整備といった大型事業中心の成長戦略を掲げ、推し進めるには都構想の実現を、と説くが、大阪の今の苦境にどれだけ即効性がある政策かは疑問が尽きない。

 大都市・大阪の再生に「万能薬」はない。都構想も総合区も一長一短があるし、まったく別の改革の道筋もありえよう。

 住民投票で再び市民の選択を問う前に、知事、市長と議会とで時間をかけ、ほかの選択肢も含めて議論を深めるべきだ。

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