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 人間か機械か――。その能力や優劣、特性がさまざまな場面で話題になっている。スポーツの世界も例外ではない。

 ビデオ映像を判定にどう生かし、競技をより魅力的なものにするかという課題に、いま多くの関係者が取り組んでいる。

 サッカーのJリーグは、今季から審判の判定を検証する制度を導入した。試合後にチームから疑義がでると、審判側とチーム側の代表が映像を見て議論する。開幕した先週の土日に行われた20試合のうち、6試合で計8件の検証要請があった。

 チームに判定やルールへの理解を深めてもらうのとあわせ、審判の能力向上が狙いだ。判定が覆ることはないし、会議の内容も公表されない。それでも審判には一定のプレッシャーがかかるだろう。緊張感がうまく作用して、狙い通りの結果につながることを期待したい。

 プロ野球では、本塁打とホームベース上のクロスプレーの判定にビデオ映像が活用されている。こちらはその場で確認して当否を判断する仕組みで、昨季は計86件で24件が覆った。

 約50年前から導入している大相撲は別格として、サーブの時速が200キロを超えるテニス、計30人の選手が密集戦をくり返すラグビーと、ビデオ活用の場は近年着実に広がっている。

 プレーのスピードや水準が上がり、肉眼での判定がいっそう難しくなっていることを考えれば、この流れは変わらないし、ファンの要望にも沿うだろう。

 一方で懸念もある。

 正確を期すには角度を変えて映像を撮る必要があり、器具や人手の経費がかさむ。導入されるのは一部の国際大会やプロの試合に限られるが、そこでの判定ミスがクローズアップされ、審判全体の権威や信頼がゆらぐようでは困る。

 むろん正しくジャッジするのが審判の役目だ。バーチャルリアリティーを使った研修プログラムの開発など、競技団体にも工夫と努力が求められる。

 しかし、選手、指導者、観客が審判に対する敬意を失えば、試合の雰囲気はすさみ、トラブルも続出する。

 ミスをあげつらうばかりでは審判は萎縮し、優秀な人材も集まらず、やがて競技自体が成り立たなくなる。人は間違いを犯すという前提に立ったうえで、「審判はよりよい試合を一緒につくっていく協働者」という認識をみんなで共有したい。

 いかに精巧な機械が登場し、優れた映像が残されても、最後に判断を下すのは人間だ。だからこそスポーツは面白い。

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