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 まさに安倍「1強」を謳歌(おうか)するかのようだった。

 自民党はきのうの大会で、党総裁の任期を「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長することを正式に決めた。これで安倍首相は1期目をあわせれば通算10年、3500日超、政権を担うことが可能になる。

 大会では党員が8年ぶりに100万人を回復したことが報告され、安倍氏はあいさつで憲法改正発議に強い意欲を示した。

 だが衆参両院で過半数を占める党内に目を転じれば、「もう一つの自民党」が見えてくる。開かれた議論や、活発な政策論争を失った、単色の政党だ。

 総裁任期の延長は、一部の党幹部がまとめた案に、目立った異論も出ないまま、短期間であっさり決まった。

 天皇陛下の退位をめぐっても首相に近い執行部を中心に議論を進め、全議員が参加できる論議の場は設けられなかった。

 党や内閣の方針を、多様な視点から吟味する。そんな政党として当たり前の機能が、今の自民党は劣化していないか。

 「1強」ゆえのおごりや緩みも目につく。昨年の臨時国会では、首相の所信表明演説中に若手議員らが「スタンディングオベーション」で応えた。今国会では、森友学園の国有地売却問題で参考人招致に難色を示すなど、解明に後ろ向きと言われても仕方がない。

 「1強」の背景には、1990年代の衆院への小選挙区制や政党交付金の導入と、首相への権力集中の積み重ねがある。

 選挙での公認権や政治資金、内閣や官僚の人事権を握る首相官邸に異を唱えれば、自らの立場を危うくしかねない――。そんな空気が党内を覆う。

 一方で「1強」を支える民意は、積極的な支持ばかりとは言えない。国政選挙での連勝は、民進党が旧民主党政権の挫折から立ち直れていないことに助けられている面が大きい。

 小選挙区制は、得票率に比べて勝者の側の議席の占有率が高くなりやすい制度でもある。2014年の衆院選で自民党は小選挙区で75%の議席を得たが、得票率は48%に過ぎなかった。

 昨年の新潟、東京の知事選では自民党の推薦候補が敗れた。「脱原発」「都政改革」といった鮮明な対立軸と有力な選択肢が示されれば、有権者の判断は大きく変わる可能性がある。

 異論や批判に耳を傾け、常に自省する。そんな姿勢がなければ権力は腐敗する。その影響は広く国民に及ぶ。歴史が教える権力の危うさを自民党はいま一度、胸に刻むべきだ。

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