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 企業は働き手にきちんと賃金を支払い、それを織り込んで市場で公正に競争する。消費者はモノやサービスの質と値段を見比べ、買うかどうかを決める――。こうした条件が整わない経済は、どこかにひずみを抱えている。

 宅配便最大手のヤマト運輸で、サービス残業が常態化していたことがわかった。昨夏に横浜市の支店勤務者2人について労働基準監督署から是正勧告を受け、調査を進めている。持ち株会社傘下のグループ会社を含め、未払いの残業代は数百億円になる可能性があり、会社側はすべて支払う方針だという。

 ヤマトは徹底した顧客サービスで、宅配便という業態を切り開いてきた。その裏に働き手へのしわ寄せがあったのなら、大きな問題だ。ただちに改め、再発防止に取り組むべきだ。

 インターネットを使った通信販売の普及で、宅配便の利用は急速に増えてきた。ヤマトでも、ネット通販大手のアマゾンを含む法人顧客の荷物量が、右肩上がりで伸びている。

 一方、運送料の単価は年々下がる傾向にあった。1990年から基本運賃を据え置いたことに加え、大口割引の比重が増えたためという。そこにドライバーなどの人手不足が重なり、効率化によるコスト減も限界に突き当たったのが現状だろう。

 ヤマトは今春闘で荷物量を抑えるための労使協議に乗り出す。宅配料金も全面的に値上げする方針を打ち出した。

 値上げ幅にもよるが、労働条件の是正のための経営判断としてはうなずける。コスト増の要因を考えれば、値上げ対象は法人の大口顧客を中心にすべきだろう。不在時の再配達への上乗せ料金なども検討されていい。

 結果として消費者がネット通販などに払う送料が増えたり、受け取りが不便になったりするかもしれない。だが、買い物の手段は通販だけではないし、早く届かなくてもいいものもある。料金に見合うサービスを柔軟に選べる仕組みが伴えば、受け入れられるのではないか。

 ただ、実際の書店などが減る中で、宅配便は公共インフラに近づきつつある。宅配ボックスを戸建てや公共施設に広げる試みもあるが、高齢化の進展などを見据え、サービス向上や効率化への投資や研究は不可欠だ。

 日本全体でみたとき、人手不足の顕在化は、労働条件の改善と脱デフレにつながるチャンスであると同時に、今後の経済のあり方を考える上でのチャレンジでもある。ヤマトのつまずきから学ぶべきことは多い。

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