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 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の施設部隊を5月末に撤収させる。安倍首相がその方針を明らかにした。

 南スーダンの治安情勢は悪化し、事実上の内戦状態にある。憲法9条との整合性を保つために設けられた「PKO参加5原則」に適合しているのか、強い疑問がぬぐえない。

 南スーダンの国造りは途上だが、日本の支援は憲法の枠内で行われるのが大前提だ。部隊撤収の判断自体は妥当と言える。

 一方で解せないのは、撤収理由についての政府の説明だ。

 自衛隊の施設整備に「一定の区切りがつけられるから」であって、「治安の悪化」は要因ではないと言うのだ。

 現実はどうか。

 昨年7月に自衛隊が活動する首都ジュバで大規模な武力衝突が起き、数百人が死亡した。本来ならこの時点で撤収を決断すべきだったのではないか。

 さらに昨年11月には国連事務総長の特別顧問が「ジェノサイド(集団殺害)になる危険性がある」と警告。国連難民高等弁務官事務所は今年2月、周辺国へ逃れた難民が150万人を超えたと明らかにした。

 そんな情勢のもとで日本政府は昨年11月、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」などの新任務を派遣部隊に付与し、自衛隊が武器を使用する可能性がいっそう広がった。

 国際社会に広く知られた現地の情勢悪化を、日本政府が過小評価しようとするのはなぜか。

 部隊派遣や駆けつけ警護の付与と、憲法との矛盾を国民の目からできるだけ隠したい――。そんな狙いからではないか。

 一端が見えたのは派遣部隊の「日報」をめぐる混乱だ。

 防衛省は日報を当初は「廃棄した」としていたが、後に発見されたという日報には昨年7月のジュバでの大規模な武力衝突が「戦闘」と記載されていた。稲田防衛相はそれでも「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではない」と、あくまで「戦闘」とは認めようとしない。

 今回、「治安の悪化」を認めないのも同じ思惑なのだろう。自衛隊の海外派遣という重大な政策判断にもかかわらず、国民への説明責任を果たそうとする姿とは程遠い。

 自衛隊が何をし、何ができなかったのか。憲法9条をもつ日本にふさわしい貢献は何か。

 大事なことは、5年に及ぶ自衛隊派遣を検証し、教訓をくみ取ることだ。そのためにも、まず事実に誠実に向き合うことから始めなければ、禍根を残す。

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