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 大多数の国民から「ノー」をつきつけられた韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が、その座を追われた。韓国の憲政史上初めて弾劾(だんがい)が成立し、罷免(ひめん)された。

 この間、韓国政界は最高権力の長期間の空白という異常事態に陥った。北朝鮮への対処など多くの懸案への対応が滞った。

 何より急ぐべきは国政の安定化である。政府と与野党は大統領選挙のプロセスを遅滞なく進め、一日も早く統治機構を落ち着かせねばならない。

 朴氏が追及された問題は、古くからの知人であるチェ・スンシル被告との癒着である。この知人のために大統領の地位権限を乱用したり、公務上の秘密を含む資料をチェ被告に渡したりしたと認定された。

 チェ被告にも、娘が名門大学に不正入学した疑いなどが相次いで浮上した。

 大統領の権勢をかさに着た行動が明らかになるにつれ、市民の抗議のうねりが拡大した。それは、朴政権下にとどまらず、長年、韓国社会に広がった不平等の問題が露呈したからだ。

 急速な経済成長をとげた韓国だが、今では「ヘル(地獄)朝鮮」という言葉が飛び交う。極端な貧富の格差や過熱する受験戦争、若い世代の失業率の高さなど、希望が見いだせない社会を嘆いた表現だ。

 かつての軍事独裁を脱却し、韓国が民主化を勝ち取って今年で30年。民衆の圧倒的な行動が「絶対権力」といわれた大統領の交代をもたらしたのは、韓国型民主主義のひとつの到達点として歴史に残ることだろう。

 新大統領を決める選挙は5月初めまでに実施される。

 日本政府は、いわゆる少女像が釜山の日本総領事館前に設置されたことの対抗措置として、2カ月以上も駐韓大使らを一時帰国させている。だが、韓国ではこれから政治論議が一気に活発化する。大使らを早く任地に戻し、新政権ができるまでの情報収集や対話のパイプづくりに万全を期すべきである。

 韓国はこの弾劾を、統治システムの見直しの機会ととらえるべきだろう。

 これまでも歴代大統領は、金銭絡みの事件で親族に逮捕者を出してきた。大統領に権限が集中しすぎるため、親族ら周辺の関係者に、利権を求める人々が群がる病弊が指摘されてきた。

 次期大統領選では、一部権限の首相への分担も含めた改憲が争点になる可能性がある。

 同じ混乱を繰り返さないためにはどうすべきなのか。権力のあり方を根本的に見つめ直す契機としてほしい。

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