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 栃木県那須町で登山講習中の高校生ら8人が亡くなる痛ましい事故から1週間がたった。

 県警が当時の状況を捜査しており究明を待つべき点は多い。それでも、助かった生徒をふくむ関係者の話から浮かびあがるのは、雪崩の危険性に対する引率教員らの認識の甘さだ。

 「絶対安全と判断した」。講習会の責任者は、事故から2日後の記者会見でそう述べた。

 現場付近で何度も訓練したことがあり、雪崩の恐れのある場所は避けたという。遭難者の位置を知らせる送受信機(ビーコン)を生徒たちに持たせなかったのも、「危険な場所には行かない」との理由からだった。

 だが、その判断は取り返しのつかぬ結果を生んでしまった。

 前夜から一気に30センチも雪が積もり、雪崩注意報が出ていた。そんなときに「絶対安全」はありえない。地形を見た専門家からは「雪崩が起きる典型的な斜面」との指摘も聞かれる。

 引率教員の中には、20年以上の登山経験があるベテランもいた。人知を超えた自然の前で、人間という存在はいかに無力か。何度も肌身で感じてきたのではないだろうか。

 細心の注意を払い、情報を集める。十分な装備のないまま山には踏みこまない。引き返す勇気をもつ。そうした姿勢を身をもって示して欲しかった。本来なら、それが生徒たちへの最大の教えになったはずだ。

 気になるのは、スポーツ庁が「原則」禁止としてきた高校生の冬山登山を、事故を機に栃木県教委が「全面」禁止にしようと検討していることだ。これまでは、登山計画書に基づき日程や装備の審査をパスすれば、例外措置として認めてきた。

 8人死亡の衝撃は大きく、検証し教訓を残すのが、残された者の務めだ。だが導き出すべき結論が、これだろうか。

 自然の美しさと怖さを知り、みずからと向き合いながら一歩ずつゴールを目指す。それが登山の魅力だろう。

 国も過去に出した通達で、適切な指導者のもと、安全に配慮したうえでなら、高校生が冬山で基礎訓練を行うことを否定していない。雪崩の危険をどう避けるか、万一巻きこまれたらどう対応したらいいか。高校生のうちから、それらを学ぶ意味は決して小さくない。

 大切なのは、若者が様々な経験を積み、状況を判断し、難局を克服する力を身につけることだ。そのために、大人は培ってきた技術や知識を次代にどうやって伝えるか。そこに知恵と工夫を寄せなければならない。

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