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 1日240万人超が利用している大阪市営地下鉄が来春、民営化される。全国各地にある地下鉄では、特殊法人を04年に民営化した東京メトロに続く。

 人口減少時代に入り、大都市でも公共交通の先行きは厳しい。民営化で経営の自由度を高め、乗り切ろうとするのは一つの方向性として理解できる。

 大阪の地下鉄は84年の歴史を持つ。民営化には根強い反対論があり、市議会で2回否決された。吉村洋文市長は、新会社の全株式を市が当面保有する条件を示し、可決にこぎつけた。

 多くの利用者が「良かった」と実感できてこそ、民営化は初めて「成功」となる。ホームドア整備や南海トラフ地震対策といった安全上の課題も多い。新会社はやみくもな収益増に走らず、利用者目線でのサービス改善を一歩一歩進めてほしい。

 地下鉄は建設費が高い。大阪以外の八つの公営地下鉄は数百億~数千億円の累積赤字を抱え、経営改善に苦しんでいる。

 横浜市では03年に有識者会議が「民営化が望ましい」と提言したが、市は公営維持を選択した。ほかの都市で今のところ、ただちに民営化を目指す動きはないものの、大阪市の試みは、地下鉄経営のあり方をめぐる議論に一石を投じよう。

 大阪市は、新会社の事業多角化に期待を寄せる。公営と違って法的な制約が少なくなるためだ。遊休不動産を活用した賃貸マンション建設や保育所運営などが想定される。東京メトロでは、鉄道以外の事業からの収入の割合が十数%に達している。

 ただ、無理は禁物だ。大阪市は90年代に甘い見通しのもとで土地信託に手を染め、多額の損失を出した。本業以外への進出は、新会社の能力と体力を見極め、慎重に進めるべきだ。

 新会社は利用者数と営業収益で関西の大手私鉄5社をしのぐ存在になる見込みだ。その潜在力は、関西全体の交通の質を高めるために生かしてほしい。

 明治以来、大阪市では「市内の交通は市営が担う」という考え方が強く、他社との協調に消極的だったとされる。郊外と結ぶ他社の電車との相互直通運転は東京圏の地下鉄では10路線あるのに、大阪は3路線だけだ。

 関西は急速に高齢化する。人々に外出を促し、まちの活力を保つには、より使いやすい公共交通が不可欠だ。地下鉄はもちろん、新会社の子会社に事業譲渡されることになった市営バスも高齢者には大切な足だ。

 私鉄やJRとの連携を深め、「どうすれば便利になるか」の追求をリードしてもらいたい。

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