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 一歩前進ではある。だが、開催まで3年という時点でなお続く混迷に暗然とする。

 東京五輪の経費分担問題で、小池都知事が都以外につくる仮設施設の整備費500億円全額を、都が負担する方針を表明した。とはいえ、これで事態が一気に進むとはとても思えない。

 セーリング会場の江の島などをかかえる神奈川の黒岩知事の言葉が象徴的だ。「小池知事に安心して下さいと言われたが、何をもって安心なのか」

 決着したのは仮設施設の扱いだけで、それ以外の運営経費をどうするかは依然未定だ。開閉会式や暑さ対策などもふくめ、最大7500億円にのぼる。

 セーリングでいえば、漁業補償や1千隻を超す船の移動・係留の費用がかかる。バスケットボール会場となる「さいたまスーパーアリーナ」は、11カ月間の休業を求められている。その期間の当否や休業補償をめぐる検討も手つかずのままだ。

 経費分担の協議は昨春始まる予定だった。その後、都知事の交代などがあったとはいえ、小池知事が「仮設分について3月中に負担の大枠を決める」という約束を守らなかったことが、スケジュールをさらに遅らせ、関係者の不信を増幅させた。

 組織委員会の罪も重い。

 開催都市である都、政府、自治体、競技団体の間を調整し、五輪の準備を主導するのが組織委の仕事だ。収支の折り合いをつけ、場合によっては、当初計画の変更を求めて国際オリンピック委員会や国際競技団体にかけあう窓口にもなる。

 にもかかわらず組織委の森喜朗会長は、小池知事や日本オリンピック委員会を全面的に批判する著書を先月出版し、世間を驚かせた。今回の都の方針表明についても、「遅すぎる。500億円が空中で回っていたかのようだ」と述べた。一緒に準備を進めていこうという姿勢を、感じ取ることはできない。

 こんな様子で、組織委トップの任にたえられるのか。もはや体制を抜本的に見直すべきときではないか。

 政府の動きにも疑問が多い。

 この間、丸川五輪相の存在感は皆無で、安倍首相がいきなり登場して調整を指示したと思ったら、直後に小池知事が全額負担を表明した。都議選を控え、どう立ち回れば自分たちに有利か、首相官邸と知事との間で思惑が交錯していたように映る。

 五輪のイメージを傷つけ、人びとの間に嫌悪と不信を植えつける政治利用というほかない。

 東京五輪を、この大きな危機から救い出さねばならない。

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