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 かぜの治療に抗菌薬(抗生物質)は必要ない――。

 厚生労働省が開業医などに向けてつくる抗菌薬の「適正使用の手引き」に、こんな方針が明記されることになった。

 発熱や鼻、せき、のどの痛みを伴うかぜのほとんどは、ウイルスが原因で起きる。抗菌薬は細菌には効くが、ウイルスには効かない。それどころか、吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用をもたらす恐れがある。

 にもかかわらず、外来診療の現場で広く使われているのが現実だ。処方する医師の責任が大きいのは言うまでもないが、患者やその家族も、正しい知識を身につける必要がある。

 かぜは基本的に自然に治る。だが、抗菌薬を飲み、それが効いたと思う患者が少なくない。「抗菌薬を処方してくれるのが良いお医者さん」ということになれば、医者も患者の希望を無視できず、効かないと知りつつ処方する。

 実際、東北大学のグループが14年に行ったネット調査では、「かぜで受診したら抗菌薬を処方してほしい」との項目に、約2割の人が「そう思う」と答えた。「抗菌薬はウイルスに効く」という説明に「はい」と答えた人も半数近くいた。同じことを聞いた別の調査で、日本の大人の正答率は米国などに比べて低いとの結果も出ている。

 むだな投与がなくなれば医療費の抑制になるが、それよりも今回、厚労省が手引をつくる背景には、抗菌薬の効かない耐性菌の広がりがある。世界保健機関(WHO)によると日本は耐性菌が検出される割合が高く、中耳炎や膀胱(ぼうこう)炎といった身近な病気でも見つかっている。

 抗菌薬の歴史は、1928年に青カビから発見されたペニシリンにさかのぼる。以来、新しい抗菌薬が開発されると、それに耐える菌が現れる「いたちごっこ」が繰り返され、新薬の開発は難しくなりつつある。

 耐性菌への対応は、いまや世界的な課題で、昨年5月の伊勢志摩サミットの首脳宣言にも盛りこまれた。厚労省は、20年に抗菌薬の使用量を「13年比で3分の2」にまで減らす計画を掲げている。

 これまで抗菌薬になじんできた人は、処方されないと不安に思うかもしれない。そんなときは、医師に疑問をぶつけてみればいい。逆に、細菌性の病気と診断されて抗菌薬を処方された場合は、飲み切って菌を完全に殺す。それが、新たな耐性菌の登場を防ぐことにもつながる。

 患者も医師も正しい認識をもち、正しい使い方を進めたい。

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