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 周辺で暮らす人々の不安を置き去りに、原発がまた続々と動きだそうとしている。

 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)ではこの春、佐賀県知事と玄海町長が再稼働に同意した。関西電力大飯(おおい)原発(福井県おおい町)も先月、新規制基準に適合し、福井県知事とおおい町長の同意手続きへ進む。

 事故に備えた住民避難計画をつくる周辺30キロ圏では、首長や住民から再稼働反対の声が相次ぐが、電力事業者は耳を傾けない。再稼働への同意を得るべき「地元」は、原発の立地市町村と道県に限っているからだ。

 東京電力福島第一原発事故の被害を経験した日本で、事故前と同じ手続きを繰り返す限り、住民の不安はぬぐえない。

 「地元」の定義を見直し、少なくとも30キロ圏の自治体に同意権を認めるよう改めて訴える。

 ■被害に差なし

 同意権は法令上の権限ではない。自治体と電力事業者が結んでいる安全協定にある「事前了解」の規定がおもな根拠だ。

 玄海原発の30キロ圏にある佐賀県伊万里市(人口5万5千人)。塚部芳和(よしかず)市長は昨夏、再稼働への反対を明言した。

 福島原発事故後の13年に30キロ圏の福島県南相馬市を訪ね、「周辺と立地自治体とで被害の差はない」と痛感した。立地自治体並みの事前了解を含む安全協定の締結を九電に求めたが、九電側は拒んだ。「いくら反対してもかやの外。事故のリスクだけは負わされる。あまりに理不尽だ」と塚部市長は憤る。

 周辺では長崎県の3市長も反対を表明した。だが、県境をまたげば知事でも同意権はない。

 15年以降、川内(鹿児島県)、伊方(愛媛県)、高浜(福井県)の3原発が立地自治体だけの同意で再稼働した。

 福井県に隣接する京都府や滋賀県は同意権の拡大を訴えてきた。北海道函館市は、海を挟んで23キロ離れた大間原発(青森県)の建設差し止め訴訟を起こした。被害が及ぶ恐れがある地域がなぜ「地元」と認められないのか、という問いかけだ。

 ■地域の目を安全向上に

 朝日新聞の社説はこれまでも同意権を持つ地元の範囲を広げるよう主張してきた。より多くの自治体が同意手続きで原発の安全性をチェックすればその向上が期待でき、住民の信頼につながると考えるからだ。

 安倍政権は、新規制基準は世界で最も厳しく、原子力規制委員会が適合だと認めれば安全性は確認される、との見解だ。

 ただ、国際原子力機関(IAEA)が求める5層の安全防護策のうち、新規制基準がカバーしているのは4層までだ。

 第5層は原子力防災だ。1~4層が突破されて原発外に放射性物質が拡散する事態を想定し、住民を避難させて被曝(ひばく)を防ぐ「最後の壁」だ。国は福島原発事故後、その計画づくりを30キロ圏の自治体の責務とした。

 自治体が原発の安全性の確認を国任せにせず、自分たちが担う避難計画の実効性も含めてまだ不十分だと判断すれば、再稼働に待ったをかける権限を与えることは当然ではないか。

 判断には専門知識も要る。福島原発事故の独自検証を続ける新潟県のように、専門家組織を設けることも有益だろう。

 ■国会で議論を

 同意権の範囲拡大には、ほとんどの立地自治体も否定的だ。

 立地自治体は、電源三法に基づく国の交付金や住民の雇用確保など、財政・経済面で原発の恩恵を多く受けてきた。「同意権を持つ自治体を増やせば、それだけ原発は動かしにくくなる」との警戒感がにじむ。

 「安全協定の本来の意味に戻るべきだ」。金井利之・東京大教授(自治体行政学)は話す。

 60年代以降、立地自治体が協定締結に動いたのは、電力事業者に事故やトラブルの情報を隠させず、必要に応じて「もの申す」ことで、住民の安全・安心につなげるためだった。

 「不安や懸念を抱く自治体が周辺にあれば、何を問題視しているか、広く一緒に議論すればいい。安全性はさらに高まり、立地自治体にもプラスのはずだ」と金井さんは言う。

 各自治体が安全面のみを中立的に判断できるよう、原発の稼働の有無で財政・経済面の受益に差が出ることがないようにする制度づくりも考える必要があると説く。

 そうした制度を考えるのは、国の役目のはずだ。

 安倍政権はこれまで、地元同意の範囲は「国が一律に決めるものではない」(世耕弘成経済産業相)と傍観してきた。

 ただ、「地元」をめぐる電力事業者・立地自治体と周辺自治体の分断を放置し、周辺の異論も無視したままの原発再稼働をこれ以上続けてはならない。

 30キロ圏の自治体の同意を再稼働の条件として法令に明記するなど、やり方はいろいろ考えうる。事故から6年余り、積み残されている重要課題として、国会で論議していくべきだ。

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