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 京都市長は市の土地買収をめぐり2005年に26億円の賠償を命じられ、一部を払った。

 神戸市議会は09年、市の外郭団体への補助金約50億円の返還を求められた市長らに対する賠償請求権を放棄した。

 住民訴訟で、首長に高額な損害賠償を命じる判決が相次ぐ。そんななか賠償金額に上限を設け、それ以上は免責できる改正地方自治法が先週、成立した。

 改正のポイントは二つだ。

 ひとつは、首長や職員の賠償額の上限を条例で定められるようにすることだ。

 首長らが高額な賠償請求を恐れ、思い切った政策判断をしにくくなりかねないと指摘されている。行政の過度の萎縮を防ぐ効果を期待できる。理にかなった判断だと評価する。

 住民訴訟は地方自治法に定められた裁判手続きで、住民個人が直接の不利益をこうむらなくても、行政のあり方をただすために起こせる。同様の仕組みのない国政に比べて、首長や職員はより厳しく責任を問われる立場にある。

 むろん安易な免責は許されない。住民訴訟が自治体を監視する役割を果たしてきたのは確かであり、法改正で住民訴訟の機能を損なうことがあってはならない。このため、上限額設定の要件を「重大な過失がないとき」としたのは当然だ。

 上限額の目安は、国が政令で定める。国会審議では、会社法が代表取締役らの賠償限度額を「年収額の6倍」としている例が紹介された。一案だろう。

 改正の二つめのポイントは、議会が賠償請求権を放棄する議決をするときは、監査委員から意見を聴くことだ。

 ただ、住民訴訟は監査請求を経たうえで提訴される。再び監査委員に意見を求めることに、どこまで意味があるのか。

 国会審議では、民進党などが訴訟係属中の放棄を原則禁止するよう求めた。賠償責任をあいまいにしたまま放棄の是非を判断するのを避けるためにも、採り入れるべきだった。

 分権をすすめる時代に、議会の行為を制限するのは極力避けるべきだと考える。一方で、参考人からは「首長と議会がなれ合っていれば違法行為のやりたい放題だ」との批判が出る実態もある。こうした安易な放棄議決だとすれば容認できない。

 賠償請求権を放棄するなら、議会はその理由を説明し、広く理解を得る責任を負う。

 安直な免責や無責任な請求権放棄を横行させないためには結局、住民が首長と議会を厳しくチェックしてゆくしかない。

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