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 朝鮮半島など国外にルーツがある人々に向けて「帰れ」「死ね」といった罵声をあびせ、社会からの排斥をあおる。こうした言動の解消を目指した「ヘイトスピーチ対策法」が施行され、3日で1年が経った。

 東京・新大久保や大阪・鶴橋をはじめ、多くの在日コリアンが生活する地域でのデモや街宣行動は減少傾向にある。川崎市や大阪市では、差別をあおるデモを繰り返した団体や個人に、裁判所が一定範囲での活動を禁じる仮処分決定を出した。

 「不当な差別的言動は許されない」と明記した国の対策法ができた成果だといえよう。

 一方、ネットやSNS上では、匿名を隠れみのにした排外的な表現が後を絶たない。

 大阪のNPO法人・コリアNGOセンターには、今も「絶対に在日朝鮮人を日本から追い出す」と脅すメールが届く。

 日韓の歴史認識をめぐる摩擦や北朝鮮の核・ミサイル実験が報じられるたび、緊張を強いられる人々がいる。「韓国にお帰りください」といったメッセージが今も届くというフリーライターの李信恵(リシネ)さん(45)は「社会の根っこの偏見や差別意識は変わっていないと感じる。対策法という骨組みはできたが、肉付けはこれからです」と話す。

 対策法に罰則はもうけられていない。一方で同法は自治体に対し、相談窓口を置くことや人権教育の充実、啓発活動などの施策を、地域の実情に応じて講じるよう求めている。

 しかし集会を事前規制するガイドラインや、条例づくりの動きがあるのは川崎市、名古屋市、神戸市などひと握りだ。自治体を後押しするためにも、国は定期的に実態調査し、手立てを示してほしい。居住地によって泣き寝入りを余儀なくされる人をうんではならない。

 全国で初めてヘイトスピーチ抑止条例をつくった大阪市は今月、在日コリアンに「ゴキブリ」「殺せ、殺せ」などと発言するデモの動画を「ヘイト」と認定し、内容や日時などを公表した。条例では投稿者の実名を公表できるが、動画投稿サイトの運営会社の協力が得られず、ネット上の呼称を公表した。

 今後、市は投稿者の実名を把握するために条例の改正も検討するという。実効ある抑止に向けた先行自治体の模索を、他の自治体も参考にしてほしい。

 大切なのは一人ひとりが、同様の言動を受けたらどんな風に感じるか、想像することだ。家庭や学校、職場で、社会的少数者の尊厳を傷つける言動を許さないという意思を共有したい。

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