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 国民にきちんと説明しないまま、政府は財政再建の目標を変えるつもりなのではないか。

 経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の文言の変更が、そんな疑念を呼んでいる。

 借金に頼らずに政策経費をまかなえるかを示す基礎的財政収支(PB)を、20年度に黒字化する。その従来の目標に加え、国内総生産(GDP)に対する国と地方の債務(借金)残高の比率を安定的に下げることを同時に目指すとした。

 債務残高比率の引き下げは、昨年の骨太方針では収支黒字化達成後の目標として脚注で触れていたが、それを格上げした。

 政府は「PB黒字化の目標としての位置づけは変わらない」と説明するが、額面通りに受け取るわけにはいかない。

 首相は今年の施政方針演説で、昨年の演説で言及した基礎的収支に触れなかった。3月の国会答弁では「私はPB至上主義者ではない」「大切なことは税収を増やしていく、そのために名目GDPが上昇していく状況をつくること」と強調した。

 軸足が、中長期の目標だった債務残高比率の引き下げに動いているのは間違いないだろう。

 背景には、20年度の収支黒字化が絶望的だという事情がある。内閣府が1月にまとめた試算では、高めの経済成長を続け、19年10月に消費税率を10%に上げても、20年度の収支は8兆円余の赤字が残る。

 一方、債務残高の対GDP比率は17年度は180%台後半の見込みで、先進国の中で最悪の水準だが、16年度からはわずかに下がる。高めの経済成長を達成できれば18年度以降も低下し続け、小幅なプラス成長でも当面は横ばいの見通しだ。

 財政の悪化に歯止めがかかっているように見えるが、日銀の金融緩和に伴う超低金利に支えられていることを忘れてはならない。いったん金利が上がれば債務残高は簡単に膨らむ。

 骨太の方針からは消費増税についての記述も消えた。思い出すのは1年余り前のことだ。

 首相は主要7カ国(G7)首脳会議で、世界経済は危機に陥るリスクに直面していると唐突に訴えた。その直後、「再び延期することはない」と断言していた消費増税を「新しい判断だ」と言って再延期した。

 今回の骨太方針での一連の記述の変更も、次の「新しい判断」への布石ではないのか。

 なぜ従来の財政再建目標の達成が難しくなったのか。今後、国の財政をどう運営するつもりなのか。政府には国民に対して説明する責任がある。

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