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 安倍首相が提案した憲法改正の2020年施行をめざして、自民党が議論を始めた。

 そのなかで、改憲の是非を問う国民投票と衆院選を同日に実施する案が浮上している。

 これは看過できない。

 自民党は改憲原案を年内にまとめ、他党との協議をへて来夏にも国会として発議したい。それで、来年12月に任期が切れる衆院議員の選挙と一緒に国民投票をやろうというわけだ。

 シナリオ通りに進むかどうかは分からない。だが首相は先月のテレビ番組で「衆院選、参院選と国民投票を別途やることが合理的かどうか」と語った。周辺には「同時にやった方がいい」との考えを示したという。

 確かに憲法上、同日実施は認められている。憲法96条は憲法改正の国民の承認について「特別の国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票」で決めるとしている。

 投票率の向上や経費節減のため「同日実施の方が合理的だ」と指摘する憲法学者もいる。

 こうした点を踏まえても、国民投票と衆院選を切り離して行うのが筋だと考える。

 理由は主に三つある。

 第一に、選挙運動には公職選挙法で厳しい規制があるが、国民投票運動には表現の自由や政治活動の自由への配慮から原則として規制はない。ルールの違う二つの運動が同時に展開されれば、混乱は必至だからだ。

 たとえば国民投票には費用もビラ、ポスターの配布も、宣伝カーの台数も制限がない。戸別訪問も認められ、個人による個人の買収禁止規定もない。

 費用が制限され、戸別訪問も買収も禁止される公選法とは大きく違うのだ。

 第二に、同日実施はしないというのが、かねて与野党の共通認識であることだ。

 06年の国民投票法の衆院審議では、与党案の提出者である自民党議員が「有権者の混乱を引き起こしかねないという観点から、同時実施は想定していない」と明言していた。積み重ねてきた国会審議を軽視すべきではない。

 第三は、首相らが同日実施をめざす背景に、一体化によって憲法改正への賛成機運を押し上げる思惑が透けることだ。

 与野党が競い合い、国民に政権選択を問う衆院選なら「多数決の原理」でいい。

 だが憲法は違う。国の最高法規である。

 改正はできるだけ多くの政党や国民の合意に基づくべきだ。

 必要なのは、熱狂ではなく冷静な議論である。

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