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 性犯罪の厳罰化を図る改正刑法が先の通常国会で成立し、来月13日に施行される。

 相手をモノ扱いし、意思を抑えこみ、尊厳を踏みにじる。それが性犯罪の本質であり、魂の殺人と呼ばれるゆえんだ。

 強姦(ごうかん)罪の名称を強制性交等罪に変え、男性の被害も対象とする。刑の下限を懲役3年から5年に引き上げ、起訴する際に被害者の告訴を必要とする定めをなくす。子どもの保護監督にあたる親らが、影響力に乗じてわいせつ行為などをするのを罰する規定も新設された。

 被害者の声に応える改正で、むしろ遅すぎたと言っていい。

 とはいえ国会内外の議論を通じて、なおただすべき事項や足りない点が浮上している。

 例えば、改正後の強制性交等罪の条文にも「暴行または脅迫を用いて」との文言が残った。恐怖で抵抗できなかった場合など、暴行はなかったとして起訴が見送られたり無罪になったりするケースが現にある。

 国会審議では、改正案づくりに関わった参考人の刑法学者から、大切なのは本人の自由な意思が奪われたか否かで、暴行・脅迫要件を過剰に重くみるべきではないとの発言もあった。捜査や公判ではこれまで以上に、それぞれの具体的事情に応じた適切な運用が求められる。

 「監護者」を処罰する条文についても、学校の教師や部活動の指導者らは対象にならないため、さらなる手当てが必要だとの指摘が出ている。

 改正法には「施行3年後の見直し」が盛りこまれた。暴行・脅迫要件の改廃や監護者規定のあり方は、その際の大きな検討テーマになるだろう。

 性犯罪をめぐっては、被害者からの多様な相談に乗って支援する公的窓口の整備をはじめ、二次被害を生まない事情聴取の方法や裁判手続きの改善、子どもが自らの身を守る性教育、加害者に施す更生プログラムの充実など課題が山積している。

 だが法務委員会での対政府質疑は、衆参両院で各1日、あわせて11時間ほどで、表面をなでただけで終わった。衆院で参考人の陳述はなく、性犯罪の被害女性から話を聴く機会は、参院でようやく実現した。

 政府・与党が「共謀罪」法の成立を優先して刑法改正を後回しにする一方、加計学園問題などでの追及を恐れて国会閉会を急いだためだ。表向きの発言とは裏腹に、性犯罪の深刻さに対する無理解が見てとれる。

 こうした体質の克服こそが問われている。議論をさらに深めて、「3年後」に備えたい。

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