[PR]

 建築の材料としてアスベスト(石綿)が使われた公営住宅が、32都道府県で約2万2千戸になる。そんな実態が、被害者らでつくる「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」(東京)の調査で明らかになった。

 ほとんどの建物は、石綿の飛散を防ぐため、溶剤を吹きかけて封じ込めるなどの対策工事が施されている。だが、工事以前に住んでいた人は吸いこんだ可能性がある。

 石綿は吸い込むと数十年にも及ぶ潜伏期間をへて、肺がんや中皮腫、石綿肺を発症する恐れがある。過去の住民をたどって情報を伝え、健康に影響がないか、確かめる必要がある。

 国土交通省は先月、石綿が使われた団地名を公開したり、相談窓口を設けたりするよう都道府県に通知を出した。情報の提供は、不安を解消する一歩になる。各自治体はインターネットなどで建物名を公表し、周知に力を尽くしてもらいたい。

 今回の発表後、神奈川県は、現存する5団地で約30年前に対策工事をした箇所がその後も大丈夫か、緊急点検にのりだし、相談窓口も設けた。「不安に思う方もおり、できることはやる」という理由だ。他の自治体も参考にすべき取り組みだ。

 石綿は06年に製造や輸入、使用が禁止されるまで、半世紀にわたって建設資材として主に使われた。高度経済成長期、壁への吹きつけや、配管の保温、煙突や屋根の断熱材となった。木造住宅での利用は少なく、会館や駐車場、工場・倉庫などで建材が使われた可能性が高い。

 問題は、民間の建物の実態が十分把握できていないことだ。国交省が89年以前に建てられた大規模建築物(千平方メートル以上)26万6千棟を調べたところ、石綿の吹きつけがあった建物は1万6千棟あり、うち5千棟は対策工事がとられていなかった。石綿使用の有無が不明な建物は約2万8千棟あった。

 各自治体は建設業者を追跡するなどし、石綿の使用歴を確かめ、飛散のおそれがあれば所有者に除去や封じ込めなどの対策をとるよう指導すべきだ。

 機械メーカー・クボタが兵庫県尼崎市の旧工場従業員ら78人の死亡を発表して12年になる。工場周辺の住民も中皮腫などを発症し、患者団体の集計では同工場の石綿が原因とみられる死亡者は、周辺住民300人超を含めて500人近いという。

 石綿禍を巡っては、国が被害の可能性を認識しながら効果的な対応をとらず、健康被害を拡大させた経緯がある。同じ失敗を繰り返してはならない。

こんなニュースも