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 東京23区内は大学の学部の新設・増設を抑制し、原則として定員増を認めない。そんな内容の閣議決定が先月あった。地方創生政策の一環だという。

 地方を元気にするために、若者が東京に出るのを食い止めたいとの思いは、わからないではない。しかし効果は疑わしく、副作用も心配される。

 東京の大学は地方出身者が3割を占めるが、この15年間、比率は下がり続けている。地元志向が近年の若者の流れだ。都内の有名大学が「首都圏進学校の出身者ばかりになってしまい、多様性が損なわれる」と危機感を抱き、地方の人材を呼び込む工夫をしてきたほどである。

 そもそも若者が上京するきっかけは進学よりも就職が主だ。東京都への転入は、20代前半が10代後半の4倍に達する。地方に雇用をつくらないと根本的な解決にはならない。

 都心の大学の意欲と活力を奪いかねない規制を課す一方で、政府はその大学に国際競争力の強化を迫り、留学生や学び直しを望む社会人の受け入れを増やすよう求めている。手足を縛ったうえで遠くまで泳げというようなもので、筋が通らない。

 政府は、閣議決定には「学部を改廃して定員の空き枠を充てるなら、学部の新設を認める」とあり、大学側にも配慮しているというかも知れない。

 しかし教員には専門分野がある。工学部をつくるからといって法学部から人を移すわけにいかない。時代の要請に応じた新増設は、公正・透明な手続きのもとで柔軟に認めるよう、閣議決定を見直す必要がある。

 経済的な理由で進学できない子を生まないために、各地域に大学がある意義は大きい。しかし今、地方大学の多くが資金難や定員割れに苦しんでいる。地域のシンクタンクとして頼りにされ、全国の学生が進学したくなるような特色ある大学づくりを急がねばならない。

 そのためには、国立大学の運営費交付金や私学助成金を、地方に手厚く配分することも検討してよいのではないか。

 人の行き来は社会の多様性を高め、活力をもたらす。都心大学の規制によって、地方から東京への移動を一部抑えられたとしても、逆の動きを生み出すのは難しい。その意味で、今回の閣議決定が、地元に就職した学生の奨学金返済を支援する制度や、企業の地方採用枠の拡大、地域限定正社員制度の導入を盛り込んだことは評価できる。

 若者が地方をめざす。そのための様々な仕掛けを用意することに、知恵を絞りたい。

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