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 輝かしい土俵の記録の数々は、平成の大横綱の名にふさわしい。白鵬(32)が名古屋場所で通算勝利を1050勝として史上1位に、過去最多の優勝回数も39回へと積み上げた。

 ほかにも全勝優勝13回、連続7場所優勝、幕内勝利956など、主な記録の頂点にいる。15歳でモンゴルから来日し、綱を張ること10年。シコやテッポウの基本稽古を飽きることなく積み重ねてきた証しである。

 考えさせられたのは、「白鵬が近い将来、日本国籍を取得する考えを持っている」という関係者の話が、記録達成を機に一斉に報じられたことだ。

 日本相撲協会の規定には「年寄名跡の襲名は、日本国籍を有するものに限る」とある。まだ先の話ではあるが、現役引退後、親方として協会に残り、後進を育てるには、国籍を変更しなければならない。

 長きにわたり相撲人気を支えてきた最大の功労者に、酷な決断を迫る決まりではないか。

 白鵬の父はモンゴル相撲の元横綱で、メキシコ五輪レスリングで銀メダルを獲得した英雄だ。白鵬自身の活躍も故国で広く伝えられている。そうした事情を抜きにしても、自らの仕事も、ルーツも大切にしたいという人として当然の思いは、最大限尊重されてしかるべきだ。

 協会の規定は、ハワイ出身の元関脇高見山が活躍していた1976年にできた。以来、親方になった外国出身の力士は、すべて日本国籍を得ている。

 導入の理由ははっきりしないが、協会には、下積みや裏方の苦労を知らぬまま出世することの多い外国人力士が、親方になることへの抵抗があるという。若手を指導したり、協会幹部となって相撲の伝統や様式美を伝えたりできるかという不安だ。

 だがそれは国籍の問題ではない。親方としての資質や情熱があるか否かだ。指導者、そして組織を運営する者としての適不適をしっかり見きわめる目が、協会には求められる。

 年寄名跡はかつて数億円で取引され、不祥事の温床にもなった。3年前の公益財団法人への移行に伴い、協会の管理下に置かれることになったが、理事長の交代などをうけて改革機運は後退。実態がどこまで変わったか、疑問は残ったままだ。

 白鵬の新記録と国籍取得の動きは、期せずして、昔ながらの世界にとどまる大相撲界に一石を投じる格好になった。

 相撲を愛し、将来の協会を担う人材を、発掘し、育てる。その仕組みづくりを再考する、良い機会にしてはどうだろう。

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