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 日本の南方にある近隣国フィリピンの情勢は、東アジアの安全と安定にかかわる問題だ。

 過激派組織が新たな拠点として触手を伸ばしているならば、なおさら事態は重大である。日本政府は混乱の収拾に向けて外交行動を強めるべきだ。

 南部のミンダナオ島で、国軍と武装組織の戦闘が2カ月以上続いている。ドゥテルテ大統領は先週、就任2年目の施政方針演説で、この地域に出した戒厳令への理解を求めた。

 武装組織は、中東の過激派「イスラム国」(IS)に忠誠を誓っている。戦乱が悪化すれば、ISが影響力を広げる恐れは高まる。フィリピン政府が軍と警察を動員して治安の回復に努めるのは無理もない。

 だが、忘れてならないのは、力による掃討で根本的な解決は図れない現実だ。

 この国はキリスト教徒が多数派だが、南部はイスラム教徒も多い。ミンダナオ島では、キリスト教徒による入植への反発もあり、70年代から分離・独立を求める武装闘争が続いてきた。

 そうした流れを考えれば、抜本的な解決に欠かせないのは、地域の自治の確立である。

 自治政府づくりはすでに合意がある。2014年、最大の武装勢力「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)と政府が結んだ和平合意で決まった。

 しかし翌年に武力衝突が再燃し、世論が硬化した。自治政府をつくるための法案は、前政権の下では成立しなかった。

 武装勢力幹部らは当時、「和平努力が滞れば、不満を持つ若者が過激主義に取り込まれる」と警告していた。いま、その懸念が現実となりつつある。

 仕切り直しの新しい法案審議が国会で始まった。ドゥテルテ氏は初のミンダナオ出身の大統領で、和平を公約にしていた。過剰な力の行使は控え、法案成立へ向けて国会や世論の説得に力を尽くしてもらいたい。

 ミンダナオ島に周辺国や中東から過激派が集まるとの懸念は国際的に広がっている。インドネシアとマレーシアは、フィリピンと共同で洋上警備を始めた。アメリカ、オーストラリアも軍事作戦に協力している。

 日本は15年ほど前から現地の経済支援を続け、国際停戦監視団に専門家も派遣した。11年に日本でMILF議長と当時のアキノ大統領の秘密会談を仲介、包括和平に道筋をつけた。

 半世紀近い紛争を鎮めれば、近隣の安保環境の改善にもつながる。日本政府は、フィリピン政府や関係各国と連携を強め、和平に貢献していくべきだ。

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