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 1年間の防衛省・自衛隊をめぐるできごとや日本の防衛政策の方向性を国内外に示す。それが防衛白書の目的である。

 ところが驚いたことに、きのうの閣議で報告された2017年版の防衛白書からは、重大な事案が抜け落ちている。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸上自衛隊の「日報」についての記述が一切ないのだ。

 白書の対象期間が昨年7月から今年6月末までだから。防衛省はそう説明する。

 確かに特別防衛監察の結果が発表され、稲田前防衛相らが辞任したのは7月末のことだ。

 だが、自衛隊の海外での運用に関する文書管理と文民統制の機能不全が問われた重い案件である。昨秋の情報公開請求に対し、防衛省が日報を廃棄したとして12月に非開示にし、一転して今年2月に公表した経緯や、稲田氏が3月に特別防衛監察を指示した事実をなぜ書かないのか、理解できない。

 防衛省は来年の白書に監察結果を書くというが、今年の白書にも追加できたはずだ。実際、稲田氏の「巻頭言」は、後任の小野寺防衛相のものに差し替えた。7月上旬の北朝鮮のミサイル発射も盛り込まれている。

 そもそも日報隠蔽(いんぺい)の狙いは何だったか。日報は昨年7月、首都ジュバでの激しい「戦闘」を生々しく報告していた。だが、稲田氏らはこれを「衝突」と言い換え、PKO参加5原則は維持されていると強弁した。

 陸自派遣を継続し、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」などの新任務を付与したい――。日報隠蔽の背景には、そんな政権の思惑があった。

 白書は当時のジュバで「発砲事案」「激しい銃撃戦」が発生したと記した。一方で「戦闘」の記述はなく、日報の存在にもふれていない。

 やはり安保法に基づく米艦防護についても、5月に初めて実施された事実を安倍政権は公表せず、白書にも言及はない。

 自衛隊の活動の幅も、政府の裁量も大きく広がった安保法の運用には、これまで以上の透明性が求められる。それなのに、現実は逆行している。

 白書は北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威や、中国の海洋進出の活発化への懸念を強調した。自衛隊の任務遂行には国民の理解と信頼が欠かせないという指摘はその通りだ。

 ならばこそ、不都合な事実を隠しているとの疑念を招いてはならない。白書だけでなく、防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を傷つける。

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