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 7月に国税庁長官に就いた佐川宣寿氏が、慣例の記者会見を開かないことになった。

 国民から税金を徴収するという絶大な権力を持つ国税庁は、他の役所にもまして説明責任を求められる。トップが自ら納税の意義を語り、国民に協力をお願いする。就任会見はその貴重な機会であり、少なくともここ十数年、新長官は臨んできた。見送りは異例の事態だ。

 国税庁は「諸般の事情」としか説明していないが、理由は明らかだ。

 佐川氏は先の通常国会で、財務省理財局長として、森友学園への国有地売却問題で何度も答弁に立ち、事実確認や記録提出を拒み続けた。いま、会見を開けば、森友問題に質問が集中するのは必至だ。佐川氏が回答を拒否すれば、その様子が国民に伝えられる。

 自身への直接の批判を免れるのに加え、支持率低迷に直面する安倍政権への悪影響を防ぐ。「会見なし」を誰が決めたのかは定かでないが、そうした思惑があるのだろう。

 国会で国民への説明を拒絶する役回りだった人物を、国会が閉じたとたん、とりわけ説明責任が重い役職に就ける。入省年次といった身内の論理に基づく決定の結果が「会見なし」だ。人事を決めた麻生財務相と承認した官邸の責任は重い。

 長官の沈黙が国税庁への不信の広がりを招けば、徴税の業務に影響が出かねない。国民・納税者との関係を築き直すには、森友問題の真相解明に一貫して後ろ向きだった財務省自身が態度を改めるしかない。

 ここは、財務省を率い、副総理として安倍政権を支える麻生財務相が、混乱収拾に向けて職員に徹底調査を指示するべきではないか。

 大阪府豊中市の国有地を、財務省はなぜ、鑑定価格より8億円余りも安く森友学園に売ったのか。財務省と学園との間でどんなやりとりがあったのか。その土地に建設予定だったのが、安倍首相の妻昭恵氏を名誉校長とする小学校だったため、対応が変わったのではないか。

 森友問題を巡る疑問は数多い。その一つひとつに具体的な証言と資料で答えなければ、税務行政、そして財務省への国民の不信感はぬぐえない。

 安倍首相は内閣改造後の記者会見の冒頭、森友問題にも触れたうえで、「大きな不信を招く結果となった」と反省を口にした。「謙虚に、丁寧に、国民の負託に応える」という首相の言葉が本物かどうか。政権としての姿勢が問われている。

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