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 大手建設会社でつくる日本建設業連合会は、9月にも残業時間に上限規制を設ける。

 建設業界は、政府が3月にまとめた「働き方改革実行計画」に伴う残業時間の上限導入を、東京五輪向けの工事などを理由に5年間、猶予された。

 しかし、新国立競技場の工事に従事した建設会社員が今春に自殺し、両親が違法な長時間労働だったとして労災申請したのを受け、自主規制に乗り出す。

 大手が一歩を踏み出す格好だが、中小を含む建設業界を見渡せば、解決すべき課題が山積みになっている。

 まず、低賃金と長時間労働の常態化だ。公共工事の人件費の基準額を引き上げて賃金の底上げを図っているが、まだ製造業の工場労働者に及ばない。週休2日の確保も不十分だ。

 社会保険の加入率も低い。国交省が2014年に民間工事を調べたところ、2次、3次下請けの作業員の厚生年金保険加入率は5割前後だった。

 一方で、建設現場では事故死が多く、年間約400人が亡くなっている。業界団体によれば、建設労働者10万人あたりの死亡率は英国の5倍、ドイツの3倍というデータもある。

 こうした現状の改善をめざす法律が今春、施行された。

 通称「建設職人基本法」で、全会一致による議員立法だ。この新法には二つの特徴がある。

 一つは、安全と健康の確保を民間工事にも厳しく求めた点だ。請負契約の中で災害補償の保険料を含む経費を明示することや、適切な工期を確保することなどを促している。

 対応を迫られる元請け企業は、経費の上積みが必要になりそうだ。それが元請けの責任だと自覚すべきだろう。

 二つめは、これまでの労働法制では保護されなかった「一人親方」も対象にしたことだ。

 大工や左官などで、全国に約50万人いるといわれる。「けがと弁当は自分持ち」という気風が残るうえ、下請けの末端で働く人が多く、待遇改善を求めにくい実情がある。新法を機に、保険加入率の向上や安全教育の徹底が期待されている。

 ただ、法律には罰則規定がない。政府は法に基づく基本計画を6月に閣議決定し、請負代金や工期を適正に設定することを掲げたが、業者にどこまで徹底できるかは未知数だ。

 計画の実現を図るには、工事現場により近い自治体との連携が欠かせない。

 都道府県別に毎年、保険加入率や事故率を比較するなど、できる工夫を重ねてほしい。

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