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 長時間労働をただす規制の強化と、一部の働き手を規制の対象外にする制度をつくることが、どう整合するというのか。政府に再考を求める。

 秋の臨時国会に提出が予定される「働き方改革」法案をめぐり、厚生労働省の審議会の議論が大詰めだ。

 労働基準法の改正では、働き過ぎを防ぐ新たな残業時間の上限規制と、既に国会に提出されている労働分野の規制緩和策を一緒にして、法案を出し直す方針を政府は示した。一定年収以上の専門職を労働時間の規制からはずし、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金を支払わない「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の新設と裁量労働制の拡大である。

 だが、二つのテーマは背景や目指す方向が異なる。長時間労働の是正が喫緊の課題である一方、高プロは「残業代ゼロ」との批判が強く、2年前に関連法案が国会に提出されて以来、一度も審議されずにたなざらしにされてきた。

 働く人が望む改革と一緒にすれば押し通せる。政府がそう考えているのなら言語道断だ。一本化で議論が紛糾し、残業規制まで滞る事態は許されない。二つを切り離し、まずは長時間労働の是正を急ぐべきだ。

 そもそも安倍政権の目指す「働き方改革」とは何なのか。

 正規・非正規といった働き方の違いによる賃金などの格差を是正し、底上げをはからなければ消費の回復もおぼつかない。出産や子育てがしやすく、家族の介護をしながら働き続けられる環境を整えないと、少子高齢化社会を乗り切れない。そんな問題意識が出発点で、安倍首相も「働く人の視点に立った改革」を強調してきたはずだ。

 一方、高プロ創設などの規制緩和は経済界が要望してきた。首相が「世界で一番企業が活躍しやすい国」を掲げるなか、労働者代表のいない産業競争力会議が主導し、審議会での労働側の反対を押し切って法案化された。いわば「働かせる側の視点に立った改革」だ。

 高プロは、時間でなく成果で働きぶりを評価する仕組みとされるが、成果で評価する賃金体系は今でもある。必要な制度なのか、説明は十分ではない。残業代の負担という歯止めがなくなり、長時間労働が助長されないか。いったん導入されたら対象が広がらないか。疑問や懸念は根強く、徹底的に議論することが不可欠だ。

 「働く人の視点に立った改革」を進める気があるのか。政権の姿勢が問われる。

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