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 途中でさじを投げず、この問題の複雑さにきちんと関わり続ける覚悟はあるのだろうか。

 東京・豊洲市場の移転をめぐる小池百合子都知事の最近の言動は、そう疑わざるを得ない。誠実さを欠き、関係者の不信と不安は深まるばかりだ。

 都議会ではいま、移転のための追加工事の予算案が審議されている。都議選直前の6月に小池知事が突然打ち出した「築地は守る、豊洲を活(い)かす」の意味するところを、都民の代表である都議に直接説明する最初の場となるはずだった。だが知事はあいまいな答弁に終始し、将来像は一向に見えない。

 たとえば豊洲移転後の築地のあり方について、知事は「民間の知恵をいかす」と先送りするばかりだ。都議選前に熱く語った「仲卸の目利きをいかした市場内取引の確保」などには、あまり言及しなくなった。

 仲卸の多くは零細企業だ。都が主体となり早期に構想を描いてこそ、今後進む道を決めることもできる。なのに最近の知事の態度は「移転後もまだ築地に戻りたい業者がいるなら方策を考える」と言わんばかりだ。

 いったい築地の何を、どう守るというのか。明確なビジョンを示す責務が知事にはある。それとも「守る」は選挙前のリップサービスだったのか。

 一方の「豊洲を活かす」も心もとない。昨夏、移転延期を表明した際、知事は「都民の安心を優先させる」と述べた。だがそのカギを握る地下水管理システムは、本格稼働から1年足らずで目詰まりし、水位は思ったように下がっていない。

 今回の追加工事で課題は解消するのか。補修にまた巨費を投じることにならないか。広まってしまった不安を、開場までにどうやってぬぐうのか。

 丁寧に説明し、軌道修正する点があるのなら、理由とともに理解を求める。それが行政の長として当然行うべきことだ。

 驚いたのは、豊洲・築地併存の決定過程を記録した文書がないことについて、知事が「人工知能、つまり私が決めた」「回想録に残すことはできる」と会見で述べたことだ。説明責任に背を向け、都民を愚弄(ぐろう)した発言で許されるものではない。

 支持勢力が都議会で圧倒的多数を占め、怖いものなしの状態になっているのだろう。しかし議会は乗り切れても、市場関係者、そして都民の納得がなければ、市場運営はどこかで行き詰まる。状況によっては五輪の準備にも支障が出るだろう。

 すみやかに姿勢を改めるよう、小池知事に求める。

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