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 安心して赤ちゃんを産めるよう、医療界は全国の実情を調べるとともに、安全確保のための基準作りを急がねばならない。

 麻酔で出産時の痛みをやわらげる「無痛分娩(ぶんべん)」をおこなった母子が、死亡したり重い障害を負ったりする事故が、2008年以降、少なくとも6件起きていることがわかった。

 無痛分娩は出産時の疲労やストレスの軽減に役立ち、その後の育児を楽にして、職場復帰の手助けにもなる。米国やフランスではお産の半分以上がこの方法だ。日本では、おなかを痛めて産むことを良しとする考えが根強く、普及しなかったが、近年選択する人が増えている。日本産婦人科医会によると、昨年度はお産全体の6・1%を占め、08年度の推計2・6%から大幅に伸びた。

 通常の分娩に比べて、無痛分娩は事故の発生率が高いというデータがあるわけではない。ただ、6件の事故が起きた診療所では当時、産科医が一人で麻酔も担当していた。処置自体は難しいものではないが、やり方が適切さを欠いたり、容体が急変したときの対応が十分でなかったりした可能性がある。

 同医会は全国の産科医療機関を対象に実態調査をしている。死亡や障害に至らなかった「ヒヤリハット」の事例も含めて把握・検証し、問題点を洗い出さなくてはならない。

 また、いまは無痛分娩に関する安全基準や指針がない。このため厚生労働省は8月に研究班を発足させ、今年度末をめどに提言をまとめることにした。

 お産が大きな病院に集約されてきている欧米と違い、日本ではおよそ半分を診療所が担う。無痛分娩も半数以上は診療所でおこなわれている。

 麻酔を専門で担当する医師を常駐させることが難しい場合、異常時に備え、産科医や看護師、助産師は日ごろからどのような態勢をとるべきなのか、近くの医療機関とどのように連携するかについても、具体的に検討することが欠かせない。

 医師らが正しい知識と技術を習得できる場を整備するとともに、研修などを受けて技量を備えた者を学会で認定し、それが利用者にもわかるようにしておく仕組みも必要だ。

 出産時の妊婦や新生児の死亡率でみると、日本は最も安全にお産のできる国だ。それでもリスクがなくなることはない。麻酔のメリット、デメリットを含め、医師は正確な情報を伝え、妊婦や家族は疑問があれば納得するまで話を聞く。お産に関してもそんな姿勢が大切だ。

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