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 裁判で勝訴したのに、あるいは公証役場で正式な約束をかわしたのに、相手が履行しない。転職して連絡を絶ったり、財産を隠したりする――。

 そんな問題に対処するための法整備案(中間試案)を法制審議会の部会がまとめた。

 民事上の権利を実現する強制執行制度については、その不備がかねて指摘されてきた。03、04年に民事執行法が改められたものの、問題の解消には遠かった。今回の再改正は遅すぎる感があるが、試案はおおむね妥当な内容といえる。これを踏まえて法案づくりを急いでほしい。

 とりわけ関心が高いのは、離婚後の子どもの養育費の不払い問題だ。母子世帯の6割が「一度も受け取っていない」と答えたという調査結果もある。厳しい経済環境におかれた子は進学もままならず、貧困の再生産を招く。社会の分断を防ぐためにも早急な手当てが必要だ。

 試案は、支払い義務のある者(債務者)に対し、財産を明らかにさせる仕組みを強化する方針を打ちだした。裁判所の手続きに出てこなかったり、うそをついたりした時の制裁を厳しくする。罰金や懲役などの刑事罰まで科すことに賛否があるが、実効ある制度にするため前向きに検討すべきだ。

 金融機関から債務者の預貯金の額や口座のある店名を、また一定の公的機関から勤務先の所在地を、それぞれ裁判所を介して取りよせられるようにする案も盛りこまれた。これまで個人情報保護などとのかねあいで見送られてきたが、実現すれば効果を発揮するだろう。

 ただし、たとえば消費者金融の貸金(債権)回収のために公的情報を使うというのでは、幅広い理解を得るのは難しい。養育費をはじめ、生活していくうえで欠かせない債権の執行に限るなどの工夫が可能か、詰めた議論をしてもらいたい。

 養育費の問題は強制執行制度を見直すだけでは解決しない。離婚時に書面でしっかり約束するよう、行政のサポートも進むが、海外では国が立て替え払いしているところもある。別途、さらなる検討が必要だ。

 試案には、子どもが離婚した一方の親に連れ去られるなどしたとき、裁判所がさだめる監護者のもとに戻すための手続きの整備なども盛りこまれた。

 共通するのは、裁判の結果が確実に果たされる社会にしようという考えだ。ここがいい加減では司法への期待と信頼はなり立たず、国の根幹を揺るがす。その認識にたって、今後も立法作業を進める必要がある。

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