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 福島第一原発事故を起こした東京電力に、原発を動かす資格はあるのか。

 原子力規制委員会が、柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発6、7号機(新潟県)の再稼働への審査で、安全文化が社内に根付いているかなど「適格性」を条件付きで認めた。

 「経済性より安全性追求を優先する」などと東電社長が表明した決意を原発の保安規定に盛り込み、重大な違反があれば運転停止や許可の取り消しもできるようにするという。

 しかし、今後のチェック体制を整えることと、現状を評価することは全く別の話だ。適格性を十分確認したとは言えないのに、なぜ結論を急ぐのか。近く5年の任期を終える田中俊一委員長に、自身の任期中に決着をつけたいとの思いがあるのか。

 規制委の姿勢には前のめり感が否めない。今回の判断は時期尚早である。

 安全文化は「過信」から「慢心」、「無視」「危険」「崩壊」へと5段階で劣化していくが、福島の事故前から原発のトラブル隠しやデータ改ざんで既に「崩壊」していた。東電は2013年、事故をそう総括した。改善に向けて、社外のメンバーをまじえた委員会に定期的に報告する態勢を整え、成果を誇る自己評価書も公表済みだ。

 ところが、第一原発事故で当時の社長が「炉心溶融」の言葉を使わないよう指示していたことは、昨年まで明るみに出なかった。柏崎刈羽原発では、重要施設の耐震性不足を行政に報告していなかったことが発覚。今年8月、第一原発の地下水くみ上げで水位低下の警報が鳴った際は公表が大幅に遅れ、規制委は「都合の悪い部分を隠し、人をだまそうとしているとしか思えない」と厳しく批判した。

 それなのに、規制委はなぜ、適格性について「ないとする理由はない」と判断したのか。

 福島の事故後、日本の原発について、事業者も規制当局も設備などのハード面に関心が偏っているとの指摘が内外から相次いだ。安全文化の醸成と定着へ組織運営や職員の意識を改めていくソフト面の取り組みは、東電以外の事業者にも共通する課題であり、事故後の新規制基準でも不十分なままだ。

 規制委にとって、適格性の審査は新しい取り組みだ。専門のチームで検討を始めたのは今年7月で、年内に中間まとめを出す予定という。

 まずは適格性に関する指針を固める。その上で、個々の原発の再稼働審査にあてはめ、安全文化を徹底させる。それが、規制委が踏むべき手順である。

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