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 憲法は、一人ひとりの人権を守り、権力のあり方を規定する最高法規である。その改正をめぐる議論は、国民と与野党の多くが納得して初めて、前に進めるべきものだ。

 このまっとうな筋道に、自民党は立ち戻るべきだ。

 同党の憲法改正推進本部が一昨日、9条1項、2項を維持しつつ自衛隊の存在を明記する安倍首相の案について、条文の形の試案を示す方針を確認した。

 「2020年を新しい憲法が施行される年に」。首相がそう語ったのは5月だった。

 それが森友、加計学園問題などで「1強のおごり」への批判が高まり、7月初めの東京都議選で惨敗すると、「スケジュールありきではない」と軌道修正したはずだった。

 だが結局、首相が描いた日程は変えたくないらしい。同本部の特別顧問である高村正彦副総裁は、秋の臨時国会で自民党案を「たたき台」として各党に示し、来年の通常国会で発議をめざす考えを示している。

 背景には、最近の内閣支持率の持ち直し傾向があるようだ。北朝鮮情勢の緊迫や民進党の混迷も一因だろう。それ以上に、野党が憲法に基づき要求した臨時国会召集を拒み、一連の疑惑の追及を避けていることも支持率上昇の理由ではないか。

 国会での圧倒的な数の力があるうちに、自らの首相在任中に改憲に突き進む。そんな強引な姿勢も世論の批判を招いていたのではなかったか。そのことを忘れたのだろうか。

 一昨日の自民党の会合では、首相の9条改正案に同調する意見と、国防軍保持を明記した2012年の党改憲草案を支持する意見が対立した。

 石破茂元防衛相は会合で「いまでも自民党の党議決定は草案だ。それを掲げて、国民の支持を得てきた」と指摘した。

 連立を組む公明党の山口那津男代表は、安全保障関連法が施行されたことを理由に、9条改正には否定的な立場だ。

 改憲論議には積極的な前原誠司・民進党代表も「少なくとも年単位の議論が必要だ。拙速な安倍さんのスケジュール感にはくみしない」と距離をおく。

 民意も二分されている。本紙の5月の世論調査で首相の9条改正案について「必要ない」が44%、「必要」は41%だった。

 憲法改正は、与野党の意見も民意も割れるなかで強引に進めるべきものではない。

 党派を超えて、幅広い合意づくりを心がける。衆参の憲法審査会が培ってきた原点に戻らなければならない。

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