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 安倍首相による、安倍首相のための、大義なき解散である。

 衆院総選挙が10月10日公示、22日投開票の日程で検討されている。首相は、9月28日に召集予定の臨時国会の冒頭、解散に踏み切る公算が大きい。

 重ねて記す。野党は6月、憲法53条に基づく正当な手続きを踏んで、臨時国会の早期召集を要求した。これを3カ月以上もたなざらしにした揚げ句、やっと迎えるはずだった国会論戦の場を消し去ってしまう。

 まさに国会軽視である。そればかりか、憲法をないがしろにする行為でもある。

 首相は、8月の内閣改造後、「働き方改革」のための法案などを準備したうえで、召集時期を決めたいと語っていた。

 だが解散すれば、肝いりの働き方改革は後回しになる。首相が「仕事人内閣」と強調した閣僚メンバーの多くは、まだほとんど仕事をしていない。目につく動きと言えば、「人生100年時代構想会議」を1度開いたくらいだろう。

 首相は、衆院選で掲げる公約の案を自民党幹部に伝えた。

 2019年秋の消費税率引き上げは予定通り行ったうえで、税収増の大半を国の借金の穴埋めに使う今の計画を変え、教育の無償化など「人づくり革命」の財源とする構想だ。

 しかし、消費増税の使途見直しは与党内の議論を経ていない。民進党の前原誠司代表の主張に近く、争点をつぶす狙いがうかがえる。いま総選挙で有権者に問うにふさわしいテーマとは言えない。

 さらに理解できないのは、北朝鮮情勢が緊張感を増すさなかに、政権与党の力を衆院選に注ぎ込もうとする判断である。

 自民党内では、有事や災害に備えて憲法を改正し、緊急事態条項や衆院議員の任期延長の特例新設を求める声が根強い。その一方で、衆院議員を全員不在にするリスクを生む解散をなぜあえてこの時期に選ぶのか。ご都合主義にもほどがある。

 与党は予算案や法案を通す圧倒的な数をもつ。国民の信を問うべき差し迫った政策的な緊迫があるわけでもない。総選挙が必要な大義は見当たらない。

 なのになぜ、首相は解散を急ぐのか。自身や妻昭恵氏の関与の有無が問われる森友学園や加計学園の問題をめぐる「疑惑隠し」の意図があると断じざるを得ない。

 それでも首相はこの身勝手な解散に打って出るのか。そうだとすれば、保身のために解散権を私物化する、あしき例を歴史に刻むことになる。

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