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 衆院選を実施する口実として持ち出したとしか思えない。

 消費税率を10%に引き上げて得られる財源の使い道を変える方針を、安倍首相が固めた。約5兆円と見込まれる税収増のうち、国の借金返済にあてる約4兆円の一部を、教育無償化などに回すという。

 5年前に当時の民主党と自民、公明の3党で決めた「社会保障と税の一体改革」の枠組みを変える判断である。だから、国民に選挙で問う。首相は、近く予定する記者会見でそう説明するのかもしれない。

 しかし、次々と疑問がわく。

 何より、あまりに唐突だ。

 政府が6月に決めた「骨太の方針」では、教育無償化などの財源について、財政の効率化や税、新たな社会保険方式などを例示し、年内に結論を得るとした。首相自身が、今月上旬に発足した有識者会議で「財源についてもしっかりとご議論いただきたい」と述べたばかりだ。

 今回と似た光景が浮かぶ。

 3年前の秋、10%への消費増税の是非について有識者の意見を聞く会合を重ねているさなかに、首相は増税先送りを決め、発表と同時に「国民に信を問う」として衆院解散を表明した。昨年の参院選の直前にも、政府・与党内の議論を経ないまま消費増税の再延期を決めた。

 今回は増税の実施が前提とはいえ、教育の負担軽減策を歓迎する声は少なくないだろう。選挙のたびに、有権者に訴えやすい政策を打ち出す構図である。

 財政の再建はどうするのか。

 首相は増税分の使途変更に加え、基礎的財政収支を20年度に黒字化する目標の先送りも表明すると見られる。

 とても目標を達成できそうにないことは、16年度の国の税収が7年ぶりに減少に転じたとわかった7月時点で明らかだった。「目標は堅持する」と言い続けたあげく、今になって断念するのは、「教育無償化に取り組むため」だと説明したいからか。経済成長に伴う税収増で財政も改善するとの主張が破綻(はたん)し、それを取り繕うのが狙いだと言われても仕方あるまい。

 消費増税分の使途については、民進党の前原誠司代表が、教育無償化を含む社会保障の充実に充てる考え方を先に示している。一体改革の経緯を踏まえても、衆院を解散するのではなく、国会での議論を通じて合意形成を目指すのが筋だ。

 国民に納税を求め、それをどんな行政サービスに使うかを決めていく過程は、民主主義の根幹である。首相はそれをあまりに軽んじている。

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