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 3人並んで歩いてきたが、1人は向きを変えて帰り道につき、もう1人も折り返す支度を始めた。残るは1人。しかもゴールは遠のくばかりで、帰路の段取りもはっきりしない――。

 米国、欧州、日本の中央銀行を見比べると、さしずめこんなところだろうか。

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は先週、保有する米国債などの量を減らし始めることを決めた。異例の金融緩和からの「正常化」に向けて、仕上げに入る。欧州中央銀行(ECB)は来月、資産買い入れ量を減らすことを決める見通しだ。

 一方、日本銀行は先週の会合で、「異次元緩和」の継続を確認した。ECBの方向転換が明確になれば、日銀の「一人旅」の様相が強まる。

 日銀の黒田総裁も言うように、金融政策はその国の経済・物価動向に基づいて決まるものではある。物価上昇率が1%台半ばの米国に対し、日本は0%台の半ば。彼我の差は大きい。

 ただ、金融市場では、各国の動向が即座に影響しあう。想定外の動きが起きないか、目配りが欠かせない。また、正常化に向かう米国は、景気後退時に打てる政策の余力が増している。一方、日本は手段が乏しいままで、注意が必要だ。

 さらに重要なのは、将来の「出口」への備え方である。

 米国でも、物価上昇率は想定より鈍く、FRBには慎重な手綱さばきが求められる。膨らんだ資産を減らすには、かなりの時間がかかるとみられる。

 一方、日銀の資産規模はすでに実額でFRBを超え、対GDP比ではFRBの4倍近い。出口では米国以上の難題に直面する。緩和をどう手じまいするのか。その際、経済に想定外のショックを与えないか。日銀の損失にどう対処するのか。国民への説明は明らかに不十分だ。

 日銀は、確実でないことをいうと市場を混乱させる、と繰り返す。だが、帰路の見通しがなければ、「一人旅」の不安は増すばかりだ。世界的に景気が安定し、米欧で動きが始まる今こそ、議論を深める好機だろう。逃げてばかりでは信頼を失う。

 国債残高が膨らむなかで、将来、物価目標達成後の「出口」で利上げが必要になっても、利払いの増加を恐れる政府からブレーキをかけられる恐れが指摘される。黒田総裁は会見で「妥協することはありえない」と述べ、その懸念を否定した。

 実際にそうした局面になったときに、中央銀行の独立性を貫けるかどうか。来春選ばれる次の総裁の重要な条件になる。

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