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 「使い道を見直す大きな決断をする以上、国民に信を問わなければならない」

 安倍首相は衆院を解散する理由として、真っ先に消費税収の使途の変更をあげた。

 消費税率を19年10月に10%に上げると、新たに年に5兆円余りの財源が得られる。5年前に民主(現民進)と自民、公明の与野党3党が合意した「社会保障と税の一体改革」では、5分の1を社会保障の充実に、5分の4は借金減らしに充てるが、この比率をおおむね1対1に変えて2兆円程度を捻出する。

 それを大学など高等教育の負担軽減や幼児教育の無償化、保育の受け皿整備に使うという。

 いずれも、具体的な対策を急ぐべき大切な課題だ。

 問われるのは、財政再建への道筋である。

 基礎的財政収支を20年度に黒字化する目標の達成は困難になる。しかし黒字化目標は堅持する。今後、計画を作る。

 首相はこうも語ったが、おおいなるまやかしがある。

 消費税収の使途を変えるので目標が達成できなくなるのではない。借金返済を中心とする今の枠組みを前提に、およそ現実離れした高成長に伴う税収全般の増加をあてこんでも、既に目標達成は絶望的だった。

 首相が提唱する通りに一体改革を見直すと、基礎的収支の黒字化はさらに遠のく。いつごろどうやって黒字化するのか、首相は何も示さなかった。「ツケを未来の世代に回してはならない」と訴えるばかりでは、無責任のそしりを免れない。

 高齢者向け給付が中心の今の社会保障について、首相は「全世代型へ大きく転換する」と力を込めるが、それは一体改革以来の流れだ。首相が言うような「国論を二分するような大改革」ではない。現に、民進党の前原誠司代表も、消費増税分を教育無償化などにあてる考え方を示している。まずは国会で議論するのが筋だ。

 少子高齢化のなかで社会保障を維持するには、消費増税をはじめ負担増が避けられない。消費税を政争の具とせず、国民への行政サービスと将来世代へのツケ回し抑制の両立を目指す試みが一体改革だと言える。

 しかし首相は3年前、「税こそ民主主義」という言い分で、消費増税の先送りを掲げて衆院を解散し、選挙に勝利した。同じフレーズで、今度は国民への給付の充実を訴える。

 財政再建を置き去りにし、将来世代への目配りを欠くなら、今回の提案も選挙での勝利が目当てと言うしかない。

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