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 日産自動車が無資格の従業員に車の検査を担当させていた問題は、約121万台に上る大規模リコール(回収・無償修理)に発展した。日産は安全性に問題はないとの認識だが、書類上は正規の従業員が検査していたように装っていた疑いもあり、全社的な安全管理の甘さが際立っている。▼社会面参照

 「日産を信頼して頂いている皆さまにおわびを申し上げたい。背景にある従業員の認識について徹底的に検証し、対策を立てたい」

 2日、横浜市の日産本社で記者会見した西川広人社長は陳謝。1カ月間をめどに第三者を交えたチームで原因究明に当たる。自身を含めた経営陣の責任のとり方については「調査の後で考える」と明言を避けた。

 問題が起きたのは車をつくる最終段階の「完成検査」。メーカーが国の手続きを代行する形で、自社の基準で認めた検査員に担当させることになっている。しかし日産工場では、正規に認められた検査員を支援する役割にとどまる「補助検査員」も従事していた。

 補助検査員はバッジの有無で簡単に識別できる。西川氏はこうした慣行が続いてきた理由について、「国と約束をしてやらせていただいている工程そのものの意味が十分に認識されていなかったのでは」との見方を示した。内部告発はなく、経営陣も把握していなかったという。

 ただ、関係者によると、補助検査員が担当した部分も、書類上は正規の検査員が確認したように装っていた可能性がある。組織的関与が疑われる事態に発展すれば、消費者の信頼をより大きく損なう。

 ■ブランド低下の恐れ

 日産は2017年1~6月で、日産三菱・ルノー連合として世界販売でトヨタ自動車などを上回って首位に。拡大路線をひた走る。2日は、鳴り物入りでPRしてきた電気自動車(EV)、新型リーフの発売日だったが、大規模リコールの発表と重なった。ブランド力の低下や販売減につながりかねない。

 西川氏は原因について「忙しいからとか人手が足りないからではない」と述べ、拡大路線やコスト削減が背景との見方を否定。「必要な検査は済ませ、安全面に問題がない」との認識を繰り返した。

 ただ、販売店にはリーフなどの納車を待つ購入者から問い合わせが相次いでおり、店員も対応に追われている。契約をキャンセルした例も出はじめている。

 日産は近年、トヨタやホンダなどに国内販売で水をあけられ、5位が定着していた。だが、EVへの追い風が吹くなか、自社の技術の先進性をアピール。

 昨秋以降、国内販売を伸ばしてきたが、最も基本的な部分の「検査管理」を怠った。販売会社の関係者は「新型リーフは期待の星で、販売現場の意気も上がっていただけに残念だ」と話す。

 (青山直篤、木村聡史)

 ■社長「全く認識せず」 一問一答

 記者会見での西川社長との主なやりとりは次の通り。

 ――経営幹部は検査の不備を知っていたのか。

 「国土交通省に指摘されるまで全く認識していなかった。(不備があったのが)1工場だけではないことが分かり、深刻に受け止めた。はっきりつかめていないが、認識していた者もいたと思う。1カ月間調べて、処分、責任を考えたい。ものづくりの世界ではあってはならないことだ」

 ――なぜ問題が起こったのか。

 「工場の最終工程だが、国の委託を受けてやっている。我々の都合で変えてはいけないのだが、その認識が甘かった」

 ――購入者への対応は。

 「検査自体は確実に行われている。車が安全でないから再点検するわけではない。(購入者へは)きちんと説明する」

 ――リコールの費用は。

 「250億円か、もう少しかかるかもしれない」

 ――購入者に見舞金を出すのか。

 「迷惑をかける顧客への対処はもう少し考えさせてほしい。あまり時間をかけずに案内したい」

 ――徹底したコストカットと拡大路線が原因では。

 「拡大路線で人手が足りなくなるなかで起きたというよりは、正規の検査員でなければいけないという認識が十分ではなかった」

 ――リーフの販売への影響は。

 「登録を何日か止めたので、(納車は)遅れている。影響は出ているが、最小限に食い止めたい。疑問や不安を早く解消して業務正常化に注力したい」

 ■日産がリコールする24車種

 シルフィ、ノート、ジューク、キューブ、リーフ、マーチ、GT―R、シーマ、フーガ、フェアレディZ、スカイライン、セレナ、ティアナ、エクストレイル、NV200バネット、ウイングロード、シビリアン、パラメディック、アトラス、エルグランド、キャラバン、e―NV200、ムラーノ、ラティオ

 日産は、お客様相談室(0120・941・232、午前9時から午後5時)で問い合わせを受け付ける

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