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 今年のノーベル平和賞が、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN〈アイキャン〉)に贈られる。122カ国の賛同でこの夏に採択された核兵器禁止条約への貢献が評価された。

 国連が71年前の最初の総会決議で掲げた核廃絶へ向け、ICANが機運を復活させた。ノーベル委員会はそう称賛し、世界のすべての反核運動への表彰でもある、と強調した。

 核兵器の非人道性を訴えるICANの主張を支えたのは、広島、長崎で原爆に遭った被爆者たちである。国際会議やネットを通じ、生々しい声が国際世論を揺さぶった。

 画期的な条約の成立に続く、ICANへの平和賞決定を、被爆者、日本のNGOなどすべての関係者とともに歓迎したい。「核なき世界」をめざす国際機運をいっそう高める節目とするべきだろう。

 ICANは、核戦争の防止に取り組む医師らのNGOを起点に、100カ国超にまたがる500近い団体の連合体だ。多彩な分野でそれぞれの強みを発揮する特長がある。

 医師や科学者は核戦争の被害を科学的に示し、法律家は条約の案文を作った。軍需産業の監視団体は、核関連企業への資金の流れを明らかにした。政治家や元外交官らも含め、多面的な働きかけを積み上げたことが条約成立の下地を作った。

 だが、それでも核廃絶に向けた潮流は滞っている。先月に始まった条約の署名では53カ国が応じたが、核保有国はゼロ。米国の「核の傘」の下にある日本も不参加を表明した。

 トランプ氏とプーチン氏の米ロ両首脳とも核軍拡に前向きであるうえ、北朝鮮の核開発の脅威はきわめて深刻だ。

 ただ、核が再び使われれば、人類に破滅的な影響が避けられない。その危機感がICANや被爆者らの努力で世界に浸透した意義は大きい。核に依存する政治家らの考えを変えるには、引きつづき市民社会に働きかけていくしかない。

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は昨春、「ヒバクシャ国際署名」の運動を始めた。9月末までに515万の署名を得た。20年までに世界で数億人まで増やすのが目標だ。

 多くの市民が廃絶の意思を共有し、「核兵器ノー」の包囲網を築いていく。ICANの受賞決定を、世界的なうねりへとつなげるきっかけにしたい。

 被爆国でありながら、ICANや被爆者の願いに背を向けたままの日本政府は、その姿勢が改めて問われることになろう。

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