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 日産自動車で無資格の従業員が完成車を検査した問題で、同社は6日、国土交通省に38車種、約116万台の大量リコール(回収・無償修理)を届け出た。国内のほぼ全工場で、有資格者が検査したように偽っていた。世界的な生産拡大の中での人手不足も背景にあるとみられ、経営責任が問われる事態となっている。

 リコールは、国内向けに販売してきた車種(2014年1月~17年9月製造)が対象。他社ブランド車も含めて数え方を改め、当初の24車種から修正した。所有者に通知し、販売店の工場で安全性を点検する。

 無資格者による検査について、日産はこれまでの会見などで「現場の認識不足」が主因との見方を示し、国交省に指摘されるまで経営陣は問題を把握していなかったとしてきた。しかし実際は、無資格の「補助検査員」が検査したのに、書類に資格者の「完成検査員」の名前や印章を使うなど、組織的な不正隠しが疑われかねない状況だ。

 なぜ無資格者が検査したのか。日産は否定するが、社内には「検査員の数が足りない、やりくりできないという面があったのでは」(同社関係者)との声がある。

 国交省は法令などで、各社が独自の基準で検査資格を与えるよう求めている。日産で「完成検査員」の資格を取るには最低3カ月はかかる。無資格の「補助検査員」は、これに満たない期間の実習でも習熟したとみなされ、検査にあたっていた。

 日産の完成検査員は約300人で、補助検査員は約20人。国内生産が日産よりやや少ない規模のマツダは、登録した正規の検査員が約600人いる。日産が人手に余裕があったとは言いがたい。

 補助検査員には、3カ月や半年といった期限で雇われる期間従業員もいた。資格を取るのを待つと雇用期間満了までの期間が短くなってしまうため、無資格の期間従業員を検査にあたらせた可能性もある。

 日産は長く経営トップを務めたカルロス・ゴーン会長のもと、世界の工場で生産効率を競わせてきた。世界生産のうち、日本での生産は2割に満たない。全世界での販売に占める国内販売比率は低下している。

 無資格での検査は、国内の法令に反する可能性があるが、輸出向けは問題にならない。全世界で販売する車をつくる中、比率が下がっている国内向け車での法令順守体制が次第におろそかになった可能性がある。

 ■問われる経営責任

 国交省はいらだちを強める。完成車検査は、車が公道に出る前の国のチェックをメーカーが代行する形の「性善説」に立った仕組みだが、裏切られたことになるからだ。石井啓一国交相は6日の閣議後会見で「組織的な書類偽装だとすれば非常に問題」と述べ、「経営陣が当事者意識を持ち、徹底的な調査をしてもらいたい」と求めた。

 日産の西川広人社長は、実質的な検査の信頼性に不安はないと説明してきた。これに対し国交省幹部は「何を根拠に言うのか。国の安全制度を否定する発言」と憤る。省内には「安全管理を理解しておらず、トップの資質に欠ける」との声もある。

 西川氏は日本自動車工業会会長として、今月始まる東京モーターショーも主導する立場だ。しかし日産は問題を受け、自工会の「モーターショー特別委員会」などでの主導的役割を他社などに譲る検討に入った。

 問題は、西川氏が4月に社長に就く前のゴーン体制下でもあったとみられる。日産、仏ルノー、三菱自動車の会長を兼ね、日本に不在がちだったゴーン氏も、ガバナンス(企業統治)上の責任を問われる。

 (青山直篤、木村聡史、伊藤嘉孝)

 ■日産がリコールする38車種

 シルフィ、ノート、ジューク、キューブ、リーフ、マーチ、GT―R、シーマ、フーガ、フェアレディZ、スカイライン、セレナ、ティアナ、エクストレイル、NV200、NV200バネット、ウイングロード、NV150AD、AD、AD EXPERT、シビリアン、パラメディック、アトラス、エルグランド、NV350キャラバン、e―NV200、ムラーノ、ラティオ

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