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 突然の衆院解散がなければ、臨時国会での論戦は、過労死や過労自殺の根絶に向けた長時間労働の是正が大きなテーマになるはずだった。

 手をこまねいてはいられない課題である。どんな規制や制度が必要なのか、各党の考えと本気度が問われている。

 政府が「働き方改革」の議論を加速させるきっかけになった広告大手・電通の違法残業をめぐる裁判では、法人としての電通に有罪判決が言い渡された。

 裁判官は判決で「尊い命が奪われる結果まで生じていることは看過できない」と述べ、過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)に言及した。

 社員の健康管理を軽んじ、利益を優先する体質を電通が改めるべきなのは言うまでもない。が、問われているのは電通だけではない。「過労死白書」によれば、昨年度は191人が過労死や過労自殺(未遂を含む)で労災認定されている。

 企業側の取り組みと両輪で、制度面の見直しが急務である。

 まずは、今は実質無制限の残業時間に上限を設けることだ。最低限、過労死の労災認定の目安を上回るような長時間の残業はなくさねばならない。

 あらかじめ定められた時間だけ働いたとみなす制度の適用者など、規制の範囲内に見えて実際にはもっと長く働く例もある。すべての働く人に、労働時間の把握と、健康確保の措置を徹底することも必要だ。

 安倍政権は「働く人の立場に立った改革」を強調していたが、一部の人を労働時間規制から外し、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金を支払わない「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入も進めようとした。野党が「残業代ゼロ法案」と批判し、2年間国会でたなざらしになってきた案だ。

 自民、公明両党は、選挙公約に長時間労働の是正を盛り込む一方で、高プロの導入には言及していない。残業代をなくせば長時間労働が助長されるのではないか。まず残業時間規制を優先するべきではないのか。こうした疑問に答えるべきだ。

 高プロ導入に反対してきた野党第1党の民進党は分裂し、多くが希望の党から立候補した。希望も長時間労働規制を掲げるが、「民間活力を引き出す規制改革」「大胆な働き方改革」もうたう。その具体的な内容とともに、労働分野の改革で何を重視するのか、立ち位置を明確にする必要がある。

 働き方は、多くの人にかかわる切実な問題だ。他の党も含めて、大いに語ってほしい。

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