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 突然の解散、東京都知事の希望の党立ち上げ、立憲民主党の結成……。異例の経緯をたどった衆院選が10日公示され、各候補が動き出した。自民党・公明党、希望・日本維新の会、共産党・立憲・社民党の「3極」が中心。安倍政権の5年間をどう評価し、誰に明日を託すのか。訴えに耳を傾ける12日間が始まった。

 ●東京7区 自民・組織固めて実績強調/希望・小池旋風の再来狙う/立憲民主・議席死守へ「信念で」

 自民前職の松本文明氏(68)と民進から立憲に転じた前職の長妻昭氏(57)が長らく議席を争ってきた東京7区。そこに、小池百合子・東京都知事率いる希望の党新顔の荒木章博氏(64)が割って入り、「3極」が対決する構図となった。年に計約5万人が入れ替わる中野区と渋谷区が中心で、区割りも変わっただけに、各陣営とも「風」の行方を注視する。

 安倍内閣で内閣府副大臣を務める松本氏は10日朝、中野区の事務所前で、「高齢者も若い世代も安心して暮らせる社会に転換していきたい」と語った。過去の衆院選では長妻氏に1勝4敗。これまで、知名度の高い党筆頭副幹事長の小泉進次郎氏と野田聖子総務相が応援に入るなど、党をあげててこ入れする。都連幹部は「長妻氏に希望新顔という三つどもえで、都内有数の激戦区だ」とみる。

 松本氏は地元町内会や支援団体を回って組織固めに奔走。街頭では、有効求人倍率の上昇などを安倍政権の「実績」として強調している。

 元厚生労働相で「ミスター年金」としても知られる長妻氏は立憲から立った。「信念が政治を変えると信じて立憲民主党を結党した」。10日、JR中野駅前で「国家権力の暴走に歯止めをかける立憲主義がゆがめられている。この現状を変えたい」と演説した。

 旧7区では小選挙区で3連勝中だが、解散直後から足元は揺らいだ。民進と希望との合流構想が浮上する一方、希望は憲法や安全保障関連法などの政策で公認候補を選別。枝野幸男・元官房長官らと「立憲民主党」を設立した。さらに共産党が候補者擁立を見送り、長妻氏にとって事実上の共産との共闘となる。ただ、陣営は無党派層の動向や共産との関係が選挙戦にどの程度影響するのかなどをつかみかねている。

 希望新顔で元熊本県議の荒木氏は10日朝、JR中野駅前で第一声をあげ、「小池都知事の応援団の気持ちで頑張りたい」などと訴えた。

 「しがらみだらけの政治を変えられるのは、小池代表の希望の党です」。荒木氏は7日夕、希望の党のカラーの緑のはちまきで、JR中野駅前に立った。そばでは次女で、地域政党「都民ファーストの会」代表の荒木千陽(ちはる)・東京都議(35)が声を張り上げた。7月の都議選では、小池氏の秘書だった千陽氏が中野区で自民の都議会議長らを破り、渋谷区でも自民の議席を奪っただけに、陣営は「都議選の再来を期待したい」と狙う。

 有権者はどう見るか。目黒区の会社員、能勢のぞみさん(37)は「立憲民主は使命感を持って結党したと思うし、希望にはアピール上手な小池さんがいるけど、どちらも中身がよく分からない」。渋谷区の会社員、片岡秀樹さん(50)は「有事に安心できるのは自民だが、共謀罪や安保法制、解散の仕方を見ると危なっかしい」と苦言。「目先ではなく、将来をしっかり考えてくれる人を選びたい」と話した。(高島曜介)

 ■東京7区の過去の得票数

             長妻氏        松本氏    共産候補

2003年 当   99,891     83,588  21,982

2005年 *比 113,221 当  131,464  24,110

2009年 当  167,905     79,686  24,103

2012年 当  100,872 *比  79,048  19,495

2014年 当  104,422 *比  83,476  27,866

 *比=比例区で復活当選

 ●宮城6区 北朝鮮対応、電話で第一声

 「北朝鮮情勢が緊迫しており、選挙期間中も防衛省で国を守る仕事を務めます。その分、地元の皆さんに地元を守って頂くようお願い申し上げます」

 午前10時過ぎ、宮城県大崎市役所前の選挙カーのスピーカーから、その場にいない宮城6区の自民前職、小野寺五典氏(57)の第一声が流れた。支持者ら約150人が拍手で応えた。

 現職の防衛相。この日は朝鮮労働党の創立記念日でもあり、日米韓が軍事的挑発への警戒を続けている。航空自衛隊のジャンパーを着て登庁した小野寺氏は「公示日に地元にいないのは初めて」。東京と現地を電話でつなぎ、受話器をマイクに押しつけてスピーカー越しに支援を訴えた。共産新顔の横田有史氏(73)も大崎市役所の近くで第一声。「北朝鮮問題がそれほど危機的状況にあるなら、なぜ解散総選挙をしたのか」と批判した。

 ●東京24区 安倍首相側近に3党挑む

 東京24区には、加計学園問題で関与が指摘された安倍首相側近の自民幹事長代行、萩生田光一氏(54)が5選を目指して立候補。希望の吉羽美華(37)、民進から立憲民主に移った高橋斉久(44)、共産の飯田美弥子(57)の新顔3氏が挑む。

 萩生田氏は昼前、東京都八王子市のJR八王子駅前で出陣式をした。吉羽氏が元大阪府寝屋川市議で、公示約1週間前に選挙区が決まったことを念頭に「私は地元の代表」と強調。加計学園問題などで批判を受けたことは「間違ったことは一つもしていない」と訴えた。吉羽氏は午前9時半すぎ、同駅前で「安倍政権のお友達、忖度(そんたく)、しがらみ政治を終わらせよう。八王子はその象徴的な場所」と第一声を上げた。焦点に定めるのは7月の都議選で小池氏とやりあった自民都連の総務会長でもある萩生田氏だ。高橋、飯田両氏も「お友達優遇」などと批判を展開した。

 ●神奈川6区 野党としのぎ、公明に焦り

 「選挙直前に政党の離合集散が起きている。理念も政策も全くわからない」

 神奈川県に18ある小選挙区で唯一、公明が候補者を立てる神奈川6区。10日午前、横浜市旭区の駅前で公明前職の上田勇氏(59)は野党批判を繰り広げた。

 当選7回の上田氏だが、陣営の焦りは募る。希望と共産が候補者擁立を見送り、民進から立憲民主に移った前職青柳陽一郎氏(48)との激戦が見込まれるからだ。前回衆院選の得票をみると、青柳氏=当時は維新の党から出馬=と民主(当時)の候補、共産候補の合計は11万票を超え、8万票弱の上田氏を上回る。青柳氏は連合神奈川の支援も受ける。

 青柳氏は10日、「自公一強政治を倒す選択肢は自分しかない」と訴えた。日本維新の会の串田誠一氏(59)も立候補。「国会議員の3割削減を」と駅頭で有権者に呼びかけた。

 ●新潟5区 前知事出馬、原発巡り論戦

 東京電力柏崎刈羽原発に近い新潟5区。東電や国の原発政策に対して「もの申す知事」として知られた自民新顔の泉田裕彦氏(55)が立候補した。長岡市内での出陣式で「原発政策の欠陥は与党に入って直さないといけない」と述べた。

 再稼働を進める自民での立候補。慎重派と見られていた泉田氏の選択に戸惑う有権者も少なくない。泉田氏は「原発は動いていまいとリスクはある。そこに向かい合うことが大事」などと説明してきた。

 選挙区内にある魚沼市の前市長で無所属新顔の大平悦子氏(61)は原発を争点に臨む。共産、自由、社民などの野党をはじめ、民進の県議や労働組合の連合、市民連合が支援する。「泉田氏が勝てば5区の市民が原発再稼働をOKしたと判断される」。再稼働、原発には反対だ。幸福実現党新顔の笠原麗香氏(25)は再稼働を容認している。

 ●福井1区 辞任元防衛相、「初心」訴え

 「初心に帰って、全てを出し尽くして戦います」。福井1区の自民前職、元防衛相の稲田朋美氏(58)は、福井市の選挙事務所前で第一声を上げた。

 党政調会長だった前回選挙は、地元を離れがちでも圧勝した。しかし、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報問題で7月、防衛相を辞任。今回は地元に張り付き、2日の事務所開きでは約300人に頭を下げた。「対話を中心としたどぶ板の選挙」を目指し、逆境への強さをアピールする「福井の肝っ玉おっかさん」の看板も掲げた。

 対する新顔2氏は前回と同じ顔ぶれ。希望新顔の鈴木宏治氏(43)は国政選挙4回目の挑戦で、二大政党制の実現や地方の景気回復策などを訴える。共産新顔の金元幸枝氏(59)は衆院選10回目の立候補。安保法制廃止や憲法改正反対、消費増税反対などを訴える。

 ■ベテラン、無所属で 野田前首相・岡田元代表…

 今回の衆院選では、民進から希望にも立憲民主党にも移らず、無所属で届け出た候補者も多い。野田佳彦前首相(60)、岡田克也元民進代表(64)らも党の公認を受けずに戦う。

 千葉4区の野田氏は10日朝、千葉県船橋市の選挙事務所で家族らと必勝祈願の神事を営んだ後、自身の選挙区を離れた。向かった先は同9区の千葉市若葉区。民進から希望に合流した前職の応援演説に立った。

 「『自分ファースト解散』をした安倍政権の退陣のため、ともに戦おう」

 8期目を目指す今回、初めて無所属で立った。「希望に行った人、行かなかった人、無所属で戦う人の当選のために応援するのは、民主党の代表、民進党の幹事長だった自分の務め。そのためにも無所属のほうがいい」。使うのぼり旗は、「民進党」から「一強打破」に変えた。

 その野田氏に今回は新顔3人が挑む。前回敗れた自民の木村哲也氏(48)は、後援会組織を足場に巻き返しを狙う。共産の深津俊郎氏(69)は街頭での活動に力を入れる方針だ。維新の佐藤浩氏(52)は元県議。希望は千葉県内の13選挙区のうち、この4区だけ公認候補の擁立を見送った。

 (16面に続く)

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