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 原子力規制委員会の2代目委員長に更田豊志(ふけたとよし)氏が就いて、1カ月がすぎた。

 発足から5年率いた田中俊一前委員長のもとで、更田氏は委員や委員長代理を務めてきた。田中氏と二人三脚で築いた土台をもとに、積み残された課題への取り組みが問われる。

 東京電力福島第一原発の事故後、原子力安全行政の刷新を担った規制委は、「透明性と独立性」を目標に掲げてきた。

 透明性についてはかなり徹底されている。テロ対策などを除いて会議はほとんど公開され、資料や審議内容はウェブサイトで確認できる。毎週の委員長会見は動画や速記録でたどれ、他省庁が見習うべき水準にある。

 独立性も、電力会社とのなれ合いが批判された以前の態勢と比べて改善されたと言える。

 ただ、新規制基準に照らして原発再稼働の是非を判断する適合性審査には問題が残る。評価の対象が機器などに偏り、電力会社の組織運営や職員の意識に対する審査が不十分だからだ。

 再稼働した原発の運転中の管理もまったなしの課題である。

 事故防止の第一の責任は電力会社にあるが、規制委やその実動部隊である原子力規制庁は、安全軽視の姿勢や訓練不足といった問題がないか、目を光らせる役目を負う。

 カギになるのは、電力事業者との「対話」だろう。現場への訪問などで意思疎通を図りながら、安全文化の劣化の兆候を探る。ごまかしを見抜く技術を磨くことが不可欠になる。

 世界の潮流だが、日本では手つかずだ。抜き打ち検査など緊張感を保つ手法も組み合わせ、安全を高めていけるか。更田氏は規制庁職員を米国で研修させ、検査業務に明るい米コンサルタント会社も使う考えだ。先達の知恵を生かしてほしい。

 規制委の対話力は、地震や火山噴火など人知が十分でない分野でも試される。専門の学者らと交流を重ね、最新の知見に基づく規制をめざしたい。

 柏崎刈羽(かしわざきかりわ)原発(新潟県)の再稼働について「適合」判断を示したことでは、米山隆一新潟県知事から説明を求められている。原発を抱える自治体には、規制委との距離を感じているところが少なくない。

 現地に足を運び、意見に耳を傾けて、自らの仕事を見つめ直す。そうした機会をもっと増やしてはどうか。

 独立性を追求し続けることは大切だが、孤立や独善に陥っては元も子もない。さまざまな対話を重ねて、安全性の向上につなげるべきである。

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