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 状況に応じて当初予算を補うという本来の役割を超え、抜け道に使う愚をまた重ねるのか。

 安倍首相が第4次内閣発足後の初閣議で、補正予算の編成を指示した。新しい看板政策である「生産性革命」と「人づくり革命」を柱とする2兆円規模の政策をまとめ、可能なものから実行する。そのための補正予算だという。

 景気対策が必要な経済情勢ではない。にもかかわらず、与党内では夏ごろから補正による歳出拡大を求める声が出ていた。

 それに応えるということか。対象として挙がる事業には、疑問符がつくものが目立つ。

 代表例が、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に備えた農業対策だ。

 EUとのEPAは年内の最終合意を目指し、まだ調整中だ。「先行して国内の基盤を強化する」というが、2年前に合意した環太平洋経済連携協定(TPP)でも補正を組んで対策費をばらまいた。TPPは米国の離脱で未発効のままだが、対策の効果の検証すらせずに同じことを繰り返すのか。

 生産性を高める政策は今後1カ月でまとめ、一部を補正に盛り込むという。

 そもそも生産性の向上を、「革命」のように一気に実現することは難しい。首相自身がよくわかっているはずだ。この5年間、成長戦略として様々な施策を並べてきたが、経済の実力を示す潜在成長率はわずかに高まっただけだ。

 まずは、これまでの対策が成果を生んでいない理由を考えるべきだ。「経済優先」をアピールしようと、中身を吟味せず付け焼き刃で政策を実施しても、予算の無駄遣いになるだけだ。

 昨年度の第3次補正には、弾道ミサイル迎撃態勢の調査研究費など防衛費1700億円を計上した。当初予算での防衛費の伸びを抑える狙いが透ける。補正予算は、政府内でのチェックも国会審議も甘くなりがちだ。補正を抜け道として便利に使ってきたことが財政悪化の一因であることを忘れてはならない。

 今回の補正の財源には、16年度決算の剰余金や、低金利で使い残す国債の利払い費を充てつつ、建設国債を追加発行するようだ。20年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を先送りしたばかりであり、「財政再建の旗は降ろさない」という首相の本気度が問われる局面である。

 九州北部豪雨などの災害復旧をはじめ、緊急度の高い事業はある。金額ありきでなく、不可欠の事業を積み上げる。それが補正予算である。

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