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 日産自動車が、無資格検査問題で調査報告書をまとめた。そこに浮かぶのは、役員や管理職が、生産現場の実情をほとんど把握しないまま、増産に突き進んだ姿である。経営のあり方そのものの見直しが不可欠だ。

 報告書によると、国内5工場で不正が横行していた。完成検査を資格のない従業員に任せていたのは1980年代にさかのぼる。他人の印鑑を流用し、監査時は無資格者をはずすなど、偽装や隠蔽(いんぺい)も重ねていた。

 資格を与える社内試験でも、問題と一緒に解答を配るといった不正があったという。甚だしいルール無視で、世界最大級の自動車グループとしての信頼を深く傷つけた。

 日産によると、実際に品質上の問題が起きた事例は今のところ確認されていない。現場では、資格がなくても能力を見極めて検査を担当させていたともされる。しかし、完成検査は国の法令で定められた手続きであり、高い安全性が求められる自動車会社として「結果オーライ」は許されない。

 日産は90年代に経営危機に陥り、仏ルノーと提携。カルロス・ゴーン氏の下で工場閉鎖や人員削減を進めて競争力を回復し、近年は生産を増やしてきた。西川広人社長は、不正が以前からあったとして、数値目標にこだわる「ゴーン流」が影響したとの見方には否定的だ。

 だが、不正が広がったのは、ここ数年の生産拡大で検査員不足が深刻になったからだ。非正規の期間従業員頼みの態勢が検査にまで及んでいた。コスト減らしを現場の「工夫」に過度に依存したツケと言える。

 最大の問題は、管理職や役員が生産現場の実態を理解していなかったことだ。ルールの形骸化をつかめず、増産に必要な人員体制も検討できていなかった。発覚後の対応も混乱した。現場の創意工夫を重視するのは当然だが、実情を踏まえなければ、品質確保も生産効率の向上も、足場が揺らぎかねない。

 現場側からも声が上がらなかったようだが、本社にものを言える体制を作れなかったこと自体が、経営の失敗だろう。

 西川社長は報酬を一部自主返上しているが、ゴーン氏を含めた経営陣の責任を明確にすることは避けている。これでは現場の士気が下がらないか。

 無資格検査はスバルでも発覚した。自動車産業は技術革新が進み、大きな変革期にある。生産体制や社内外のルールが実情にあっているか、改めて点検し、しっかり実行していく。それが経営の大前提である。

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