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 大学の授業料の減免や奨学金制度の拡充は、大学改革とセットで――。首相が議長を務める「人生100年時代構想会議」でそんな声が高まっている。

 無償化は格差の固定化を防ぐための政策であり、対象はそれに役立つ大学、つまり「企業が雇うに値する能力」の向上にとり組む大学に限るべきだといった考え方である。内閣官房の担当者は「真理の探究をやるので実務は関係ないという大学に、公費で学生を送るのは説明がつかない」と解説する。

 税金を使う以上、それに見合う質を求めることは誤りではない。だが政府が進めてきた大学政策を重ね合わせると、この割り切りには危うさが漂う。

 今春の経済財政諮問会議で、文部科学省は大学改革の狙いに「イノベーション(技術革新)創出と生産性向上」を掲げた。予算の配分でも、大学や研究者間の競争を重視する傾向が強まっている。いきおい、基礎研究より実用、人文社会より自然科学に有利に働くだろう。

 2年前の文科相通知を思いおこす。後に軌道修正されたものの、文系学部の廃止や転換を進めると読める内容で、大きな社会問題になった。

 大学にも選択と集中が必要だとしても、実利に傾きすぎていないか。目先の利益ばかり求めていては教育も研究も早晩やせ細る。国が学問分野によって有益・無益をあらかじめ判断し、選別するようなことにならないよう、慎重を期すべきだ。

 そもそも大学で学んだ何が、どう役に立つかは、教育を受けた本人が、それをどう消化するかによる。国の都合で学生の進む道を縛るべきではない。

 構想会議のメンバーはまた、大学の再編統合による教育の質の向上を訴える。学生を確保できない大学の撤退を唱える文科省の主張と重なるが、留意すべきは定員割れに苦しむ大学は地方に多いということだ。

 競争による淘汰(とうた)に任せれば、都会と地方の進学格差はさらに広がる。そうさせないよう、財政や運営面で地方を支える手立てを急がなくてはならない。

 気になるのは、こうした議論の底に「大学教育は役に立たない」という経済界の不信が見え隠れすることだ。だが当の企業も学生を採用する際、何を学んだかを重視してこなかったのではないか。それでは実社会を意識した授業改善が進むはずもない。大学での学びを正当に評価する選考方法を探るべきだ。

 多様な人材を世に送り出す。そのためには、学問の多様さと大学の個性が欠かせない。

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