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 47歳。控えめでさわやかな笑顔は、10代で時の人になり、注目されたころと変わらない。

 将棋の羽生善治さんが今期の竜王戦を制し、永世称号のある七つのタイトル全てで永世資格を得た。史上初の出来事だ。

 中学生でデビューし、当時、最年少の19歳で手にした最初のタイトルも竜王だった。

 羽生以前/羽生以後といわれるように、そのめざましい活躍は同世代の才能を奮い立たせ、将棋界全体のレベルを飛躍的に引き上げてきた。

 ただ、近年は苦しい場面も目についた。公式戦29連勝の新記録をつくった藤井聡太四段(15)ら若手の台頭が著しく、世代交代がささやかれた。

 コンピューター将棋の進化で、新しい戦法もすぐに古びてしまう。日進月歩の将棋界で生き抜く厳しさは、羽生さんにしても例外ではなかった。

 それをはね返した強さの秘密のひとつは、卓越した探究心ではなかったか。今回の快挙に際してなお、「将棋の本質がまだまだわかっていない」と述べたのが象徴的だ。

 「決断とリスクはワンセット」「実践には思考の何倍もの『学び』がある」「そんな馬鹿なと思われることから創造は生まれる」「先入観を捨てよ」

 膨大な試行錯誤の中から生まれたこうした羽生語録は、将棋の世界を超えて、多くの人びとの共感を集めてきた。

 人工知能(AI)をめぐる発言も、「人間とは何か」という本質を浮き彫りにする。

 短時間に多くの指し手を読む力で、コンピューターははるかに人をしのぐ。では人間の可能性をどこに見いだすのか。

 「いかに読まないかだ」と羽生さんは言う。論理ではなく、その場でパッと判断できる大局観こそが武器になる、と。

 永世七冠を決めた直後の会見で、40代後半になっての強みを問われ、「足し算でなく、無駄なことは考えずに引き算で考える」「経験によるところが大きいので、そこは大切にしたい」と語ったこととも重なる。

 ふつうは障壁と考える加齢という現実を受け入れ、しかし可能性をあきらめない。年を重ねることで得たものを駆使し、できることに絞って果敢にとり組む。この柔軟さが、羽生さんの強さを支えてきた、もうひとつの秘密といえるだろう。

 対戦相手に向き合い、相手の得意形にも飛び込みながら、自分の殻を破っていく。挑戦を続けるその姿勢は、世代や立場を問わず、これからも多くの人を勇気づけるに違いない。

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