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 ナオコさん(49歳・会社員)は、認知症の伯母さん(83歳)の〝終(つい)のすみか〟となる施設を探す中、「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)という新しい住まいがあることを知りました。この住まいは、自宅での生活が不安になってきた高齢者のための賃貸住宅のようですが、どのような特徴があるのでしょう。認知症の人も利用できるのでしょうか。

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 ナオコさんは、サ高住の情報を集めるために最寄りの地域包括支援センターに出かけました。

 「あのう、サ高住についてくわしいことを知りたいのですが、パンフレットはありますか」とナオコさんは窓口の女性職員に聞いてみました。すると、女性職員は自治体が作成している高齢者の住まいに関する冊子のあるページを開き、「ここにサ高住のことが少し書かれていますが、都道府県の担当課(高齢社会課施設係など)や民間が運営する有料老人ホーム入居相談センターなどに問い合わせたほうが知りたい情報を得られると思います」と教えてくれました。

 (高齢者の住まいということになると、地域包括支援センターにはあまり情報がないのね……)とナオコさんは残念に思いました。

写真・図版

 サ高住は、2011年10月に施行された「高齢者住まい法」に基づいて創設された住宅のことで、厚生労働省と国土交通省が共管しています。高齢者の住まいに関する制度をわかりやすくするために、複数あった制度をすべて廃止し、サ高住に一本化されました(図)。この制度が発足して以来、サ高住は右肩上がりに増え続けており、2015年7月末現在、全国に5657棟(18万2865戸)のサ高住が整備されています。

 サ高住は、原則として25平方メートル以上の専用部分(個室部分)に台所、水洗トイレ、洗面、浴室、収納が備えられ、室内はバリアフリー対応となっています(*)。また、日中は介護福祉士などケアの専門家が常駐し、安否確認や生活相談サービスを行っています。そのほか介護・医療・生活支援に関するサービスも提供されていますが、その内容は施設によって異なります。

 《*……居間、食堂、台所、そのほかの住宅の部分が共同利用するための十分な面積を有する場合は専用部分の床面積は18平方メートル以上。共用部分に共同利用できる台所、収納、浴室を備え、各戸にある場合と同等の居住環境が確保される場合は各戸に備えなくても可》

 

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解決策①

 サ高住によっては台所、収納、浴室を共同利用する場合がある。また、提供する介護・医療・生活支援サービスの費用も、施設によって異なる。このあと紹介する「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」でこれらの情報も確認し、複数のサ高住を比較するとともに必ず見学や体験入居してから、納得のいくサ高住を選ぼう。

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 「高齢者の住まいという位置づけらしいけど、終のすみかになるのかしら。医療的処置が必要になれば退所を求められるのでは……」とナオコさんは不安になりました。

 サ高住の契約には賃貸借方式と利用権方式(*)があります。いずれの場合も長期入院などを理由に事業者が一方的に解約できないことになっており、高齢者の居住の安定が図られた契約内容となっています。

 《*……賃貸借方式は一般のアパートやマンションと同じように賃貸借契約となり、借地借家法によって借り主の権利が守られている。利用権方式は居室や共用スペースを利用できる権利と食事や介護などのサービスを受ける権利を契約する。サ高住の多くは賃貸借方式を採用している》

写真・図版

 そして、サ高住の最大の特徴は入居者が自宅にいるときと同じように介護保険の居宅サービスが利用できることです。そのため、介護が必要な状態でも介護保険の居宅サービスや地域の介護保険外サービスを上手に組み合わせることによって、サ高住で暮らし続けることが可能です。

 2012年に財団法人高齢者住宅財団が実施した「サービス付き高齢者向け住宅等の実態に関する調査研究」によると、全入居者のうち約83%の人が要介護認定を受け、介護保険の居宅サービスを利用していました。また、約50%のサ高住で何らかの医療的処置(かくたん吸引、経管栄養、点滴、とう痛管理、人工透析、ぼうこうカテーテル、酸素療法)が必要な人を受け入れており、約59%のサ高住では認知症の人を想定する入居対象者であると回答しています。

 「認知症の高齢者を受け入れてくれるサ高住がたくさんあることを知って安心したわ」とナオコさんは胸をなでおろしました。

 しかし、ナオコさんが最も懸念しているのは、サ高住が〝終のすみか〟になり得るかということです。前出の調査研究によると退所の理由は「死亡」によるものが最も多く、全体の約24%となっており、次いで「医療機関への入院」(約17%)が続いています。一方、看取り(みとり)の実績があるサ高住は全体の約25%でした。これらの数字は決して高いものではありませんが、近年この分野に参入する医療法人が増えており、それによって看取りへの対応も進み、サ高住が〝終のすみか〟になる可能性は十分にあるでしょう。

 

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解決策②

 過去の調査では約半数のサ高住が医療的処置や認知症の人を受け入れてくれるようだが、このようなサ高住は人気が高く、空きがないことも予測される。看取りまで対応できるサ高住はさらに少ないので、時間がかかってもいいように早めに動きたい。

写真・図版

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 「認知症の高齢者を受け入れてくれる、そして死ぬまで面倒をみてくれるサ高住の情報はどこで入手できるのかしら」。

 このような情報が知りたい場合、すでに介護保険を利用している人は担当のケアマネジャーにまず尋ねてみるのが確実です。また、サ高住を運営する事業者は都道府県などに登録することが義務づけられており、その登録内容は一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会が運営するウェブサイト「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」で公開されているので、一般の人も閲覧することができます。

 ナオコさんもさっそく「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」で伯母さんが暮らす地域のサ高住を検索してみました。すると18件のサ高住がヒットしました。「この中に認知症の人を受け入れてくれたり、看取りまで対応してくれたりする施設はあるのかしら……」。ナオコさんはサ高住別に掲載されている五つの情報(①物件基本情報、②設備情報、③入居契約・資格等、④費用・サービス等、⑤管理・その他)をていねいに確認していきましたが、これらの情報から希望する条件のサ高住を見つけることはできませんでした。

 「うーん、ネットから情報が取れないとなると、それぞれのサ高住に直接連絡して確かめるしかないわね。それにしても1軒ずつあたっていくのは大変。目安になるものはないのかしら」とナオコさんは深いため息をつきました。

 こんなとき、目安の一つになるのが職員体制や併設施設です。前出の調査研究では「認知症への対応可」、「看取りの実績あり」と回答したサ高住で、夜間職員の配置率(夜勤の配置率)が高いことがわかっています。また、看取りの実績があるサ高住では「訪問看護ステーションを併設している」、「医療機関との協力や連携体制を整備している」傾向もみられました。

 

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解決策③

 「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」を利用して認知症の人を受け入れてくれたり、看取りに対応してくれたりするサ高住を探す場合は、①夜間職員を配置している、②訪問看護ステーションを併設している、③医療機関との協力や連携体制を整備していることが目安になる。この項目に該当するサ高住をピックアップし、電話で詳細を確認すれば希望する条件のサ高住を探せる可能性がある。

 https://www.satsuki-jutaku.jp/search/index.php別ウインドウで開きます

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 「それにしてもサ高住の場合、費用はどのくらいかかるのかしら……」。

 サ高住の入居に関する費用は、敷金、家賃・サービス費のみと定められています。したがって権利金や契約更新料などの費用は必要ありません。前払い金を支払う場合も入居者が不利にならないよう契約に関して配慮されています。

 地域によってかかる費用は異なりますが、前出の調査研究によると家賃(最低)の平均月額は5万5093円、共益費が1万8094円でした。サービス費が必要になることもあり、その場合の平均月額は1万5912円、食事サービス(3食)を利用する場合の平均月額は4万2657円でした。1カ月にかかる総費用の平均額(最低)は食費を除くと8万8882円、食費を含めると13万1615円でした。

 また、介護保険による居宅サービスを利用する場合は利用料の自己負担分(1~3割)を支払うことになり、介護保険外のサービスを利用する場合も別途費用が必要です。これらの金額を合わせると月額で15万~20万円は見込んでおきたいものです。「グループホームと同じくらいの費用がかかると考えておいたほうがいいわね」とナオコさんは思いました。

 ナオコさんは認知症の伯母さんの〝終のすみか〝としてグループホームとサ高住の二つの施設を絞り込み、担当のケアマネジャーとじっくり相談しました。そして、最終的にサ高住を選択しました。看取りまで対応してくれるグループホームに空きがなかったのであきらめた面もありますが、グループホームは居宅サービスではないため、これまでのケアマネジャーからグループホームに所属するケアマネジャーに変更しなければならないことにナオコさんはひっかかったのです。

 その点、サ高住はケアマネジャーを変更する必要はなく、入院前と同じように居宅サービスを提供してもらえるメリットがあります。また、自宅と同じように複数の事業所のスタッフが出入りするので、密室でのトラブルは起こりにくい面もあります。

 ナオコさんがケアマネジャーの力を借りて探し出してきたのは、在宅医療専門クリニックが運営するサ高住です。オープンして日が浅かったことから運よく部屋が空いていました。さっそく見学すると、部屋の間取りもサービスも、そして肝心の費用も納得できるものでした。隣町にあるため、主治医を変更しなければなりませんでしたが、新しい主治医から「伯母様の体調が悪くなったときは必要に応じて地域の医療機関や福祉施設と連携して対応しますし、看取りも訪問看護ステーションと組んで積極的に行っていきます」と説明を受け、ナオコさんは心の底から安堵(あんど)しました。

 こうして認知症の伯母さんは安心して暮らせそうな場所を見つけることができました。しかし、ナオコさんの仕事が終わったわけではありません。そうです。伯母さんには持ち家と財産があります。この処分と管理をどうするのか?。

 このお話は次週に続きます。

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アピタル編集部より

 この連載は、架空の家族を設定し、身近に起こりうる医療や介護にまつわる悩みの対処法を、家族の視点を重視したストーリー風の記事にすることで、制度を読みやすく紹介したものです。『メディカル玉手箱』は、毎週木曜日朝に新しい記事を配信します。バックナンバーも含め、下記の一覧から無料でご覧になれます。

<アピタル:メディカル玉手箱・認知症にまつわる悩み>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/tamatebako/(アピタル・渡辺千鶴)

アピタル・渡辺千鶴

アピタル・渡辺千鶴(わたなべ・ちづる) 医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、1996年よりフリーランス。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』の医学ページで「がん医療を支える人々」を連載中。

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