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告知「何とかなるやろ」

 この夏、東京都の会社員岸田徹(きしだとおる)さん(27)は、せわしない毎日を送っている。

 がんの治療とリハビリを終え、3月に復職した。平日の夜は、がん治療を経験した仲間らと集まって意見を交わし、インターネットで情報を発信。週末には、がんの子どもたちを支援するNPOの活動のボランティアもしている。

 大阪府高槻市で生まれ育った。大学生のときは、23カ国を半年かけて旅行し、現地で働く日本人を訪ね歩いた。2011年春、東京都内のIT関連会社に入社した。

 営業の仕事に励んでいた12年春、左首の付け根に小さなしこりができた。体調を崩し、6月に診療所で検査したが「問題なし」とされ、そのままにしていた。

 夏以降、38度の発熱、寝汗やだるさに見舞われた。しこりもこぶし大に大きくなった。紹介された都内の大学病院で検査を受け、11月、「胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)」と診断された。この病院では患者が年間1人いるかいないかの珍しいがんという。すぐに国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)を受診した。

 胚細胞腫瘍は精子や卵子になる前の未成熟な細胞のがん。10万人に1人というまれながんだ。子どもや20~30代に多く、男性では腫瘍が精巣にできることが多い。ほとんどは精巣が腫れることで気づく。岸田さんは精巣に腫瘍がなかったため、診断に時間がかかった。首や胸、腹部のリンパ節に転移し、進行していた。

 当時の主治医で乳腺・腫瘍内科の米盛勧(よねもりかん)さんは「残念ながら、がんは全身に広がっています」と、岸田さんに告げた。「人生、詰んだな……」。絶望的な気持ちになった。「僕はどれぐらい、生きられるんですか?」

 「5年生存率は、五分五分です」。抗がん剤が効きやすいがん、とも説明された。

 「5割も生きられるのか」。意外だった。学生時代、海外で軍に銃口を向けられたり、検問をかいくぐって紛争地帯を脱出したりした。「今回も、何とかなるやろ」。むしろ人生のネタにしていこうと開き直った。

 治療が手遅れになるのを避けるため、受診したその日のうちに入院した。

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