[PR]

前回(http://www.asahi.com/articles/SDI201512256170.html)は、スーパーで「あれ買ってよ、買って~」とだだをこねて泣いている子どもに対して、オペラント条件づけの観点からどのように対処することが望ましいかをご紹介いたしました。

対処法には以下の3つのパターンがあり、前回は【1】だだこね防止編をご紹介しました。

 

・【1】だだこね防止編 : 初めてお菓子コーナーでお菓子を欲しいとねだられ、今日は買う予定がない場合

・【2】初めてだだこね編 : お菓子コーナーで今日は買わないことを伝えたときに、初めてだだをこねだした場合

・【3】習慣的だだこね編 : すでにお菓子コーナーにいくとだだこねが習慣化している場合

 

【1】を試しても「えー、したくない。今すぐ欲しいのにー」とだだこねが始まることもよくあります。「野菜買うのはいやだー」などとあっさり否定されたりもします。

さて、どうしたものか。

 

【2】初めてだだこね編 : お菓子コーナーで今日は買わないことを伝えたときに、初めてだだをこねだした場合

いちばん「してはいけない」対応からご紹介します。それは「だだをこねた=お菓子を買ってもらえる」図式を成立させること。これは絶対にしてはいけません。

また、泣いていることを叱りつけるのも逆効果です。「ほら! なんで泣いてるの!」と言いたくなる気持ちはイタいほどわかりますが。

母親に叱られて、その場では泣くのをこらえる子どももいるかもしれません。しかし、また同じようにスーパーのお菓子コーナーで欲しいものがあったときに、泣いて、叱られて、顔色をうかがいながら泣きやむという一連の流れが繰り返されるだけで、適応的な行動を学習できていません。単にビクビクと人の顔色をうかがって、自分の欲求や感情を押し込める子どもを作っているかんじです。

また、こんな例もあります。親が他の家族の世話や仕事などで忙しいなどの理由で、日頃からその子どもに関心を向ける機会が減っていたとします。つまり、褒められることも叱られることもない状態です。

そんな状況で、スーパーでお菓子コーナーにさしかかり、子どもがお菓子をねだったとしましょう。このときにも、いつものように親は他のことで忙しくて子どものねだる声を聞き逃し、いつものような対応になっていればまだよいのです。

しかし、いろんなことで忙しく、精神的にいっぱいいっぱいになっている親が、スーパーでだだをこねだした我が子に、「ほら! どうしてそんなわがままいうの!」と強い口調で叱ったとします。

すると、その子どもにとっては、いつもなら自分の声を聞いてもらえない(結果的に無視されている)状態を、泣いてだだをこねるという方法で、親に叱られる形にせよ注目させることができた! という収穫が得られるわけです。

だだをこねる行動が、親からの注目を得られるというご褒美によって「強化」されてしまったのです。これぞオペラント条件づけです。その子どもは次の機会でも同じようにだだをこねることで、親を怒らせながらも注目を向けてもらうことを習慣にするでしょう。

さらに、その習慣がその場面だけにとどまればよいのですが、一連の行動をパターンとして学習した場合はどうでしょう。

今後、親の注目を集めたい時には、もっと親を困らせる行動をとるかもしれませんね。わざと高い所から飛び降りてみせようとしたり、誰かをつねったり殴ったりしてみせたり。もう少し大きくなると、万引き等の反社会的な行動をとる子どももいるかもしれません。

何か問題が起きた時に慌てて対応してもうまくいきにくい場合、背景にこういった事情があることも少なくないのです。

 

一方で望ましい対応は、この「いちばんしてはいけない行動」以外ならなんでもよいでしょう。

 

「そうだよねえ、お菓子欲しいよねえ」(子どもがだだをこねたら、お菓子を買ってもらえなくて悔しい気持ち共感だけはするが、買わない)

「まあまあ、ひとまず野菜コーナーにいってみようよ(場所を変えて気分をそらし、お菓子という刺激から遠ざける)」

「泣きたいだけ泣いてもいいよ。お母さん買ってあげられないけど、そばにいるから」(周りの目や迷惑を気にしないずぶとさが必要)

「まいったな、お菓子欲しいよね。ママも泣きたいわ。」(ママも困っちゃうな)

「ん? どうしたらお菓子を買ってもらえるんだっけ?」(問題解決に導く)

 

これらの対応は、「その場をなんとかおさめる方法」ではない点に注意が必要です。その場しのぎを目指しているのではなく、その子どもがだだをこねるかわりにどんな行動を学んだら今後の人生がうまくいくか、という視点が大切です。

きっとこのくらいの声かけでは、子どもはお菓子をすぐに買ってもらえない不満を爆発させて泣きやまないのが常です。が、その日の経験は必ず次に生きます。同じような場面に出くわしたときに、無意識に子どもは気づくのです。「あ、こういう場面ではいくつか解決方法があるんだった」「泣いても結局買ってもらえないんだ。泣いても解決しないんだ」と。

スーパーで泣きわめいている真っ最中の子どもは感情的で、理屈などまったく入っていかない気もしますし、そんな一日の終わりには「こんな調子でこの子は大丈夫なのかしら」「自分の言いたいことは伝わっているかしら」と途方に暮れるものです。

しかし、確実に子どもは学習しています。なぜなら「オペラント条件づけ」はハトでも学べたことなんですから。

 

【3】習慣的だだこね編 : すでにお菓子コーナーにいくとだだこねが習慣化している場合

ここで考えるのは、すでに下の図のように、スーパーのお菓子コーナーでだだをこねれば、常に母親からお菓子を買ってもらえることになってしまっている場合です。つまり、オペラント条件づけが完全に成立している状態です。

写真・図版

 

この場合、母親側には覚悟が必要です。

というのも、いったんオペラント条件づけで獲得した学習を消すには、子どもからの激しい抵抗が待ち受けているからです。「お母さん、ここで泣いたらいつもお菓子買ってくれるじゃん!」という抵抗です。

大人でも、いつもならスイッチを押せばつく電気がつかないときには、「おかしい! なんでだ!?」と何回も何回もスイッチを押します。何度か繰り返し、ようやく「電球取り替えなくちゃね」と納得したり、「あ、停電か」と気づいたりするわけです。

子どもにも同じことがいえます。つまり、お菓子コーナーで獲得されていた学習を消すためには、母親は「お菓子を買い与えない」ことにするのです。

その時に子どもは「なんで? なんでなの? こんなに泣いているのに!」といつも以上に激しく、長い時間だだをこねることでしょう。これを「消去抵抗」といいます。ごく自然な反応です。

もし、このいつも以上に激しく泣く我が子をみて、母親が「こんなに泣かせるのはかわいそうだから」と態度を一変させてお菓子をまた買い与えてしまったとしたら、どうなるでしょうか。

子どもは次のようなことを学びます。

 

  激しく長時間だだをこねる → お菓子を買ってもらえる

 

こうしてだだこね行動はますます激しくなっていくのです。

対策の大きなポイントは、消去抵抗についてあらかじめ予測して、心構えを作っておくことです。

とはいえ、公共の場で大泣きされることは、なるべく避けたいものです。そこで、子どもの年齢にもよりますが、スーパーに行く前に念入りに言い聞かせておくのはいかがでしょうか。つまり、だだをこねていつものようにお菓子を買ってもらうよりも、望ましい行動を教えて、その方がもっと得をするという仕組みを提示するのです。

たとえば、こんなふうにしてみるのはいかがでしょうか。

 

「◯◯ちゃんがすっごく好きなお菓子があったよ! いつも行くスーパーでは売ってないやつ。今日スーパーに行ってお菓子買わずに帰ってこられたら、明日それを買いに行こうか。できるかな?」

 

目先のいつものお菓子よりも、我慢すればもっと好きなお菓子を買ってもらえる……そんな仕組みを提示しています。我慢できれば、思い切り褒めます。

しかし、「明日」というお預け感に耐えられるかどうかが分かれ道でしょうし、そもそもそういう複雑な約束を理解できるのは、3歳後半くらいからでしょうか。

1~2歳代の子どもに対しては、

 

・お菓子コーナーをそもそも横切らない(刺激自体を避けて反応させない)

・数回はだだこねのひどくなる消去抵抗を覚悟して、スーパーの人の少ない時間帯を狙って行く

・好きなおもちゃを持参して、だだをこねだしたらすかさず気をそらせるようにする

・子どもの好きなキャラクターカートのあるスーパーなどで、お菓子を買う以外の魅力的な活動に夢中にさせ、お菓子の影響力を下げる

 

いかがでしょうか。

3パターンご紹介してきましたが、基本は「子どもにどんな行動をしてほしいか」「どの行動をやめてほしいか」をこちらが明確にしておくことです。

 

<アピタル:上手に悩むとラクになる>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/

(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。

こんなニュースも