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 昨年末、厚生労働省が国民健康・栄養調査の2014年の結果を発表しました(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html別ウインドウで開きます)。国民の栄養素摂取量や生活習慣の状況を明らかにするため毎年行われている調査ですが、今回、目を引いたのは世帯の所得別にみた食生活や生活習慣の状況の分析でした。

写真・図版

 約3300世帯を、世帯の所得が「200万円未満」(24%)「200万~600万円未満」(54%)「600万円以上」(22%)の三つに分け、その家族の食生活や喫煙状況、体形などを比較しました。

 食生活では、所得が低い世帯の人ほど米やパンなどの穀物摂取量が多く、野菜と肉類の摂取量は少ない傾向が出ていました。例えば世帯所得600万円以上の男性は1日あたりの穀類摂取量が平均494グラムに対し、200万~600万の男性は521グラム、200万円未満は535グラム。一方、野菜摂取量はそれぞれ322グラム、289グラム、254グラムと、所得が少ない方が減少しています。他の種類の食品の食べる量を考慮に入れても、主食に偏った食事になっていることがうかがえます。

 また、1日にとっているエネルギー量は600万円以上の男性が2180キロカロリー、女性が1741キロカロリーに対し、200万円未満の男性は2053キロカロリー、女性は1672キロカロリーと下回っています。ただ、肥満者の割合は男女とも200万円未満の方が高いのです(男性で25.6%と38.8%、女性は22.3%と26.9%)。

 低い所得の人ほど、食生活に課題がある状況が浮かび上がってきます。生活習慣でも、健診の未受診率や習慣的に喫煙している割合、歯が20本未満の人の割合は、200万円未満の世帯の人の方が高い傾向がありました。

 実は、2010年の同調査でも、所得と生活習慣に関して調べたことがあり、野菜摂取量は男女とも、世帯所得600万円以上の人よりも、200万~600万円の人が少なく、200万円の人はさらに少ない結果が出ていました。けれども、今回の2014年調査はさらに多くの項目について調べています。

 こうしたことを調べる目的について、厚労省健康課栄養指導室は「健康格差の実態を把握するため」と説明します。健康格差とは、地域や社会経済状況の差によって生じる健康状態の差のこと。国民の健康づくりに関する国の方針を示した「健康日本21(第二次)」で、「健康格差の縮小」が目標にかかげられており、対策を考えるには、経済的な状況でどのような格差が生じているのか、まず実情を調べなくては、ということなのです。

 貧しい人の方が栄養バランスに欠けた食生活をしており、肥満に悩む人が多いことは米国など海外の先進国でも共通の問題になっています。ということは、この問題は、個人の選択に帰して済ませられるものではないし、単に「よい食生活を心がけましょう」と呼びかけて改善できることでもない、社会構造上の問題であることがわかります。経済状況に左右されず、栄養バランスのとれた食生活を営み健康を保つために、社会がどのような手立てをとればいいのか。食品の価格ばかりでなく、労働時間や住宅環境、地域のつながりなど、生活に関わる他の要因も含めて考えなければならない大きな課題だと感じています。

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)